クイーンエリザベス号(読み)クイーンエリザベスごう(英語表記)Queen Elizabeth

改訂新版 世界大百科事典 「クイーンエリザベス号」の意味・わかりやすい解説

クイーン・エリザベス号 (クイーンエリザベスごう)
Queen Elizabeth

イギリスのキュナード汽船会社が建造した世界最大の客船。1936年イギリスのクライドバンクで起工,38年進水したが,40年ドイツ空軍による空襲を避けるため急きょニューヨークに回航され,同地で完成。全長314m,幅35.9m,総トン数8万3673トン,主機は蒸気タービンで出力18万1700馬力,速力29ノット,乗客定員約2280名。完成するとすぐに兵員輸送船として使用され,第2次大戦終了後の46年10月に北大西洋航路で客船としての処女航海を行った。しかし,その後航空輸送の著しい発達によって旅客が減り,クルージング用に大改装されたが,結局68年アメリカに売却され,マイアミの近くで会議場などに利用された。70年にはさらにホンコンの船主に売却され,ホンコンで海上大学船として改装中72年1月火災により転覆沈没した。姉妹船クイーン・メアリー号がある。

1965年起工,69年完成した,キュナード汽船会社の客船。全長293.5m,幅32m,総トン数6万5863トン。主機は蒸気タービンで出力11万馬力,航海速力28.5ノット。乗客定員2025名。豪華さよりも機能性を重視した設計で,幅の32mはパナマ運河通過考慮して決められた。北大西洋の定期運航だけでなくカリブ海などのクルージングにも使用されており,また82年のフォークランド紛争では兵員輸送船として徴用された。
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「クイーンエリザベス号」の意味・わかりやすい解説

クイーンエリザベス号
クイーンエリザベスごう
Queen Elizabeth

1938年イギリスのキュナード・ラインが建造した豪華客船。『クイーン・メアリー』号(→クイーンメアリー号)の姉妹船で,全長 314m,総トン数 8万3673t,収容乗客数 2288人は当時世界最大級であった。第2次世界大戦中はほとんど軍事輸送にあたったため,一般乗客輸送を始めたのは 1946年10月。1968年の引退後アメリカ合衆国フロリダ州で長期係船され,1971年ホンコンの船会社に買い取られた。洋上大学船『シーワイズ・ユニバーシティ』号として改装が行なわれ,艤装工事中の 1972年1月,船火事を起こして沈没した。

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世界大百科事典(旧版)内のクイーンエリザベス号の言及

【客船】より

…したがって,貨客船,連絡船,フェリーボートなどもそのほとんどが法律上は客船である。しかし,一般には客船といえば,クイーン・メアリー号(イギリス),クイーン・エリザベス号(イギリス)に代表される巨大で豪華な高速定期客船を指す場合が多い。このように高速定期客船は,1880年代から1950年代までの約80年にわたって世界中の航路で活躍し,とくにヨーロッパとアメリカを結ぶ大西洋航路では,当時の列強諸国がその国威をかけた優秀船が投入され性能を競った。…

【交通】より

…1909年モレタニア号Mauretania(3万1938総トン)は大西洋を4日半で横断した。12年の処女航海で1513名の犠牲者を出した悲劇のタイタニック号(4万6328総トン),1938年大西洋横断を3日と21時間に短縮したクイーン・メアリー号(8万1235総トン),〈人間の造った最大の機械〉といわれたクイーン・エリザベス号(8万3673総トン)と大型・高速の客船が相次いで建造され,20世紀前半は豪華客船の黄金時代となった。
[現代]
 第2次大戦後,モータリゼーションの波は世界各地に及び,交通機関としての自動車の重要性はさらにました。…

※「クイーンエリザベス号」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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