改訂新版 世界大百科事典 「クチナシグサ」の意味・わかりやすい解説
クチナシグサ
Monochasma sheareri(Moore)Maxim.
低地のやや乾いた落葉樹林下に生えるゴマノハグサ科の半寄生の越年草。果実の大きな萼片は,クチナシの果実を思わせる。茎は細く,根ぎわで分岐して地に伏し,長さ15~60cm。葉は対生し,線状へら形で毛が散生する。春,上部の葉のわきに1花をつける。花は白く淡紅紫を帯び,唇形で長さ1cm。果実は大きな萼に包まれ,萼裂片は大きく線形で,反りかえる。春の芽出しの若葉は赤色で目だち,カガリビソウの名がある。関東,中京地方,中国地方と四国の瀬戸内海沿岸,九州北部,中国大陸中部に分布する。
クチナシグサ属Monochasmaは2種類しかなく,ほかにウスユキクチナシグサM.savatieri Franch.があるだけである。これは全体に白毛が密生し,花は大きくて約2.5cmほどある。中国の中南部に生育し,日本では九州の天草島にのみ知られる。鹿茸草(ろくじようそう)の名で漢方薬にされ,風邪などに用いられる。
執筆者:山崎 敬
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報