日本大百科全書(ニッポニカ) 「クリスタルバイオレット」の意味・わかりやすい解説
クリスタルバイオレット
くりすたるばいおれっと
crystal violet
トリフェニルメタン系塩基性染料の一つで、美しい紫色をもつ。ジメチルアニリンとホスゲンを塩化亜鉛触媒により縮合させて合成される。堅牢(けんろう)度は高くないが、安価で着色力が強いので、絹、羊毛の染色のほか、インキなどにも使われている。酸により紫→青→緑→黄と変色するので、非水系におけるpH指示薬(酸塩基指示薬)としても利用される。
メチルバイオレットは、クリスタルバイオレットよりもメチル基の数が少ないものの混合物で、これはジメチルアニリンの銅触媒による酸化で合成される。製造の条件により組成が多少異なり、色調も赤みの強いもの、青みの強いものなどさまざまである。木綿、レーヨン、紙などの染色、インキ、顔料などの製造に用いられる。
[飛田満彦]