ケラトサウルス類(読み)けらとさうるするい(英語表記)ceratosaurians

日本大百科全書(ニッポニカ) 「ケラトサウルス類」の意味・わかりやすい解説

ケラトサウルス類
けらとさうるするい
ceratosaurians
[学] Ceratosauria

竜盤目獣脚類亜目ケラトサウルス類(下目)に分類される恐竜。かつて獣脚類は大形のグループと小形のグループに二分されていたが、分岐分類学が導入されて大分類が一新された。こうした新しい分類法の提案は1986年ごろに行われ、1990年代以降は、獣脚類からヘレラサウルス科HerrerasauridaeとエオラプトルEoraptorを除いて、このケラトサウルス類(下目)とテタヌラ類(下目)に大区分されるのが普通である。このケラトサウルス類は、コエロフィシスCoelophysisディロフォサウルスDilophosaurusなどを主とするコエロフィシス上科Coelophysoideaと、ケラトサウルスCeratosaurusアベリサウルスAbelisaurusカルノタウルスCarnotaurusなどを主とするネオケラトサウルス類Neoceratosauriaに分けられている。もっとも、アベリサウルスなどをケラトサウルス類に含めないとする異論もある。

 この類で目だつ特徴をいくつかあげてみると、たとえば、(1)成体では腸骨が坐骨(ざこつ)、恥骨(ちこつ)と完全に癒合し、骨盤を頑強にしている、(2)各頸椎(けいつい)の側面には、2対の深いくぼみ、すなわち側孔をもつ、(3)恥骨の付け根にある閉鎖管孔の下に、さらに一つ大きく丸い穴をもつ、(4)胸腰椎の横突起が強く後方に向くため、上から見ると三角形に近い、などである。これは獣脚類のなかに、成体の大きさの大小を問わず、多くの共有形質で結ばれる一つの新しい分類群が存在していることを示すもので、1984年にジャック・ゴーティエJacques A. Gauthier(1948― )により提案された。ところで、このケラトサウルス類のうち小形恐竜のコエロフィシスないしはディロフォサウルスの恥骨は棒状に近く、その先端に膨らみ(ブーツ)をもたないか、あってもわずかにすぎない。ケラトサウルスの場合は、世界唯一の組立て骨格(ワシントン国立自然史博物館)の恥骨先端に巨大ブーツがあって、巷間(こうかん)の図書にはこの写真が掲載されている。しかしこの部分は模造品であり、恥骨がコエロフィシス型の前傾を示すケラトサウルスも、グレゴリー・ポールGregory S. Paulの骨格図(1996)ではブーツをあまり発達させなかったように描かれている。白亜紀中期のカルノタウルスでは恥骨先端がブーツ状なので、産出時代がアベリサウルスとコエロフィシスの中間にあるケラトサウルスではブーツを独自に進化させ、北半球の大形獣脚類への収斂(しゅうれん)を導いたのであろう。三畳紀後期から白亜紀後期までの約30種が知られる。

[小畠郁生]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

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