ケンミジンコ

改訂新版 世界大百科事典 「ケンミジンコ」の意味・わかりやすい解説

ケンミジンコ (剣微塵子)

本来は,淡水および汽水にもっともふつうに見られる橈脚(じようきやく)亜綱キクロプス科キクロプス属Cyclopsに属する甲殻類総称体長0.5~1.5mmくらい。ほとんど無色透明である。湖沼プランクトンとして,また,湿原や地下水などにも見られる。体はほぼ卵形をした前体部と,細長い後体部とに分かれ,それらの境目で互いに可動に関節している。前体部は半円状の頭部と分節している第3~5胸節からなる。頭部には前方に1対の長い第1触角,短い第2触角,これらに続いて腹面に大顎(だいがく),2対の小顎,顎脚(がつきやく),第1遊泳脚がある。背面前方中央には1個の赤いノープリウス眼をもつ。3胸節には1対ずつの遊泳脚がある。後体部は小さい2胸節と3腹節および尾節からなる。第6胸節は有肢,無肢の第7胸節には生殖孔が開いている。雌では第7胸節と第1腹節が融合して生殖節をつくるので,後体部は雌では5節,雄では6節となっている。尾節には長い刺毛を生じている尾叉(びさ)をもつ。成熟した雌では,生殖孔の近くに卵をいれた1対の卵囊をつけている。ノープリウスで孵化(ふか)し,メタノープリウス,コペポジッド期を経て成体となる。この類は魚類などの天然餌料として重要であるが,一方,ヒトやイヌ,ネコなど哺乳類を最終宿主とする広節裂頭条虫(ハバヒロミゾサナダ),マンソン裂頭条虫および有棘顎口虫(ゆうきよくがつこうちゆう)などの内部寄生虫の第1中間宿主でもあり,第2中間宿主であるマス類を介して最終宿主に入る。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「ケンミジンコ」の意味・わかりやすい解説

ケンミジンコ
けんみじんこ / 剣微塵子

節足動物門甲殻綱キクロプス目Cyclopoidaの海産小動物の総称。湖沼と地下水および海洋のプランクトンで、魚類の鰓糸(さいし)や鰓蓋(さいがい)の内側につく種も少数ある。日本産の種は約50種。一般に体長1~3ミリメートルで、雄のほうが小さい。体は前体部と後体部からなり、前体部は楕円(だえん)形。頭部では第1触角がとくに長くて運動器官として働き、種類によっては交尾の際に把握器官となる。胸部には第1~第5遊泳脚があるが、第5脚は遊泳用ではなく、雄では著しく発達して交尾の際に役だつことがあり、また雌では発達程度がさまざまで、まったくないこともある。後体部の末節に続いて叉肢(さし)が分枝し、先端に数本の長毛がある。淡水産はキクロプス属Cyclopsを中心に多くの属に分化し、海産はオイトナ属Oithonaやサッピリナ属Sapphirinaなどが代表的で、魚類の天然餌料(じりょう)として重要である。なお淡水産の種は広節裂頭条虫の第一中間宿主となる。

[武田正倫]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ケンミジンコ」の意味・わかりやすい解説

ケンミジンコ
cyclopid copepod

顎脚綱キクロプス目キクロプス科 Cyclopidaeの総称。一般に体長 1~2mmで,雄のほうがやや小さい。長楕円形の前体部(頭部と第1~5胸節)と細長い後体部(雌では 4節,雄では 5節に分かれ,後端に一対の叉肢をもつ)からなる。第1触角が著しく長く,運動を助ける。池沼や水田などのほか地下水にも生活し,淡水魚の天然餌料となる。世界的分布を示す種が多く,日本にも多くの属種が分布している。(→顎脚類甲殻類節足動物

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百科事典マイペディア 「ケンミジンコ」の意味・わかりやすい解説

ケンミジンコ

甲殻綱橈脚(かいあし)類の中の一群(キクロプス属)の総称。体長1〜1.5mmのものが多く,ほとんど透明。体前部は楕円形で,後端は二叉(にさ)している。第1触角は長く,横に張っていて遊泳に役だつ。雌は1対の卵嚢を体後部につけているのがよく見られる。淡水,汽水にすみ,魚類などの天然飼料として重要。

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