翻訳|codex
本来は,古代ローマにおける,蠟を塗った木の板の上に文字を記し本のようにとじたものを指したが,広く,書籍の原型となった冊子本をいう。巻子本と対比される。4世紀に,水に弱く耐久性の乏しいパピルスによる巻物から,羊皮紙葉(フォリオfolio)を重ね合わせてとじたコデックスへと書籍形式が変化するが,これは中世キリスト教写本挿絵に急速な発展を促した。中世写本は,不透明な絵具で豪華に彩色され,挿絵も全ページにわたって描かれるようになり,板絵や壁画に匹敵する中世美術の一分野をなした。
→本
執筆者:馬杉 宗夫
スペイン語でコディセcódiceと呼ばれる。メソアメリカの原住民が作成していた古絵文書。現存する約500点の大部分は植民地期のもので,固有の表記法を失ったものもある。鹿皮,アマテ樹皮紙などに図像や独特の絵文字を描く方法は古典期以降,マヤ地域,オアハカ地方,メキシコ中央高原の原住民が発展させ,各地の有力領主のなかに文書館をもつものもいたが,先スペイン期のものは大部分が破棄・焚書となった。その内容は,先スペイン期のマヤの3絵文書やミステカ系のボルジア絵文書など,メソアメリカで独自に発展した暦法や宗教祭式に関するもの,ミステカのヌッタル絵文書,アステカの遍歴絵文書のような王統譜,年代記類のほか,貢納や土地台帳という実用的なものまで多岐にわたる。植民地初期に行政当局や宣教師の指示でスペイン語のアルファベットを用いて転写,作成されたメンドサ,マグリアベッチ,フロレンシアの絵文書など民族誌的絵文書もあり,征服前後の原住民社会の重要な研究資料となる。
→メソアメリカ
執筆者:小林 致広
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
…これが洋式製本の原型であり,紙が自由に使えるようになっても,原理的にはこの製本方法は変わらず今日に及び,全世界の書物の形態としてゆき渡っているのである。
[西洋]
皮紙による最初の冊子型の書物はコデックスと呼ばれるもので,巻子本から冊子型への移行は,2世紀の半ばごろからはじまり4世紀にほぼ完了する。両面に文字を記した皮紙をとじ合わせ,同じ皮紙の1枚表紙で覆っただけのごく簡素なものだが,コプト人の墓から発見された製作年代6世紀ごろと推定されるものには,表紙に簡単な模様と縁どり線を型押ししたものもあるという。…
…
[中世]
この〈巻く本〉から〈とじる本〉への進化は,暗黒時代とも呼ばれた中世,修道院の中に閉じこもって信仰と文明との明りを護持したキリスト教の修道士たちによって行われた。1926年までに出土したオクシュリュンコス全写本を調べると,3世紀以前にはコデックス(冊子本)はまったく現れていないのに,4世紀になると,異教文学のパピルス巻物はずっと減り,キリスト教の著書が大多数を占め,その総数36のうち2点を除いて他はみな冊子本である。このように,異教に対するキリスト教の勝利は,書物の世界においては,パピルスと皮紙とを問わず,巻物形式に対する冊子本形式の勝利となり,やがて皮紙が書物の主要な材料となってからは,ルネサンスに至るまでのおよそ1000年間,書物工芸の黄金時代をもたらした。…
※「コデックス」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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