ササグモ(英語表記)Oxyopes sertatus

改訂新版 世界大百科事典 「ササグモ」の意味・わかりやすい解説

ササグモ
Oxyopes sertatus

ササグモ科のクモ体長は雌6.5mm,雄4.5mm。北海道を除く日本全土に分布する。このクモは網を張らずに,日当りのよいササなどの葉の上に第1歩脚を高くかかげて,虫のくるのを待っている。虫が近づくとすばやくとびついてとらえる。この動作がオオヤマネコを連想させるとして,英語ではこの科のクモをlynx-spiderと呼んでいる。7~8月にササなどの葉の上に卵囊をつくり,母グモはその上におおいかぶさるようにして孵化(ふか)するまで飲まず食わずで卵を守る。スギの害虫スギタマバエ天敵として,実際に応用され,すばらしい成果をあげた。人工増殖が可能で,遠隔の地に運搬もできるので利用価値は大きい。ササグモ科には世界に400種がいる。日本ではほかにクリチャササグモO.badius,シマササグモO.macilentus,コササグモO.saganusなどがいずれも暖かい地方に生息している。しかし,ヨーロッパではフィンランドなどのかなり寒い地方にもすむ。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「ササグモ」の意味・わかりやすい解説

ササグモ
ささぐも / 笹蜘蛛
lynx spider
[学] Oxyopes sertatus

節足動物門クモ形綱真正クモ目ササグモ科に属するクモ。体長9~10ミリメートル。全体が黄色で、背甲に薄い2黒条、腹背黒色赤橙(せきとう)色を交えた2列の斑紋(はんもん)がある。歩脚(ほきゃく)の黒い長い棘(とげ)が目だつ。網を張らない徘徊(はいかい)性のクモで草の間を歩き回り、巧みにジャンプして餌(えさ)をとらえる。スギタマバエの天敵としてスギ植林保護のうえで重要視され、ササグモの大量飼育が試みられている。母グモは産んだ卵にしがみついて保護する。本州以南の日本各地に普通にみられる。

[八木沼健夫]


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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ササグモ」の意味・わかりやすい解説

ササグモ
Oxyopes sertatus

クモ綱クモ目ササグモ科。体長約 1cm。黄緑色の地に暗褐色,橙赤褐色の2列の斑紋がある。歩脚には黒くて長いとげが列生している。草の間や木の葉の上を徘徊し,巧みにジャンプして昆虫を捕える。葉上に卵を産みつけ,その上におおいかぶさって保護する。スギに害を与えるスギタマバエの天敵として人工増殖が試みられたことがある。本州,四国,九州に分布する。ササグモ科 Oxyopidaeに属する日本産の種はクリチャササグモ O. badius,シマササグモ O. macilentusなど数種が知られる。熱帯,亜熱帯地域では比較的種類が多い。ササグモの名前があるが笹に特に生息するわけではなく,むしろ草原に多い。 (→クモ類 )

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世界大百科事典(旧版)内のササグモの言及

【クモ(蜘蛛)】より

…三爪類Trionychaは3個のつめをもつクモで,網を張るクモはたいていこれに入る。しかし網を張らないナガイボグモ科,ササグモ科もこれに含まれる。日本にはヒメグモ科,ホラヒメグモ科,サラグモ科,センショウグモ科,ヨリメグモ科,コガネグモ科,カラカラグモ科,アシナガグモ科,ナガイボグモ科,ヒラタグモ科,ホウシグモ科,ウシオグモ科,ミズグモ科,タナグモ科,ハタケグモ科,キシダグモ科,コモリグモ科,ササグモ科など21科がいる。…

※「ササグモ」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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