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システム工学 システムこうがくsystems engineering

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典の解説

システム工学
システムこうがく
systems engineering

組織工学。システムの目的を最も能率よく達成させるために,対象となるシステムの構成要素,組織構造,情報の流れ,制御機構などを総合的に把握,評価して分析し,設計する技術または科学。システムの構成要素を個々に最適化しても,システム全体が最適の機能を果すとは限らず,これを実現するための手法が発達して工学として体系づけられた。対象となるシステムには,経営組織などの人間が構成要素として介在するものと,電話交換網やプラントなどの機器装置などだけから成るものがあるが,システム工学が特に強調されるのは前者の場合で,オペレーションズ・リサーチコンピュータによるモデル解析など,新しい経営管理手法とほとんど同義に解釈されることがある。第2次世界大戦アメリカを中心に発達した。

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デジタル大辞泉の解説

システム‐こうがく【システム工学】

ある目的のための組織体系であるシステムの分析・開発・設計・運用などを合理的に行うための総合的技術。システムエンジニアリング。SE。

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百科事典マイペディアの解説

システム工学【システムこうがく】

システムがその目的を達するための最適なありかたを研究する工学の新しい分野。第2次大戦後主として米国で発展。システムとは一定の目的のために集められ,互いに連係しあって動作する多くの要素の複雑な組合せをいい,その要素が機器からなる純物的なシステムと,社会組織のように個々の要素として人間が介在するシステムに区別される。
→関連項目経営工学工学ソフトサイエンス

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世界大百科事典 第2版の解説

システムこうがく【システム工学 system engineering】

略称SE。人工システムの計画,設計,製作,運用および廃棄を合理的に行うための考え方,手順,方法の体系をいう。システム工学が対象とするシステムは,組織化された複雑な人工システムである。“組織化された”とは,システムがある目的を達成するようシステム構造が作られていることである。“複雑な”とは,要素の数が多く,要素の間の関係が多岐にわたることである。
[歴史的経過]
 システム工学は技術的要請から誕生し成長してきた。

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大辞林 第三版の解説

システムこうがく【システム工学】

複雑な人工的システムの最適化をはかるための手順・方法・考え方を体系的に扱う工学の一分野。その応用は生産工程の管理、情報処理システム、経営管理や宇宙開発など広範な領域に及ぶ。システム-エンジニアリング。 SE 。

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日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

システム工学
しすてむこうがく
system engineering

システム工学が一つの学問体系として登場してきたのは1960年ごろである。それはシステムという考え方に基づき、そのシステムの目的をもっとも効率よく達成するために諸科学・技術を総合的・体系的に適用して、複雑な問題を解析・解決する総合的な工学的方法の体系、といえよう。
 システム工学はアメリカを中心に発達してきた。システムという考え方ないし方法を明確に特定の意味で最初に技術の世界に導入したのはF・W・テーラーの『科学的管理法』(1911)であり、のちにテーラー・システムの名で知られ、1920年代アメリカ自動車工業発展の基礎となった。それから約半世紀後、一つの学問体系としてのシステム工学の有効性と役割を鮮明にしたのは、アポロ計画による月着陸成功(1969)である。アポロ計画には数万の人員が動員され、アポロ11号には500万個の部品が使われたが、そこにシステム工学のあらゆる知識と経験が用いられ、以降、システム工学の呼称は広く知られるようになった。[荒川 泓]

システムとは何か

システムということばは、今日、コンピュータシステム、航空管制システム、銀行オンラインシステム、ごみ処理システムなど至る所で使われ、古くは太陽系solar systemという場合などがその例である。システム工学でいうシステムは特定の意味をもって使われており、次のように定義できよう。すなわちシステムとは「複数の要素から構成され、それらが相互に有機的関連をもって結合し、全体としての目的を達成すべく、特定の機能を果たすように構成された諸要素の結合体」である。静的システムの場合も含まれるが、一般には時間の流れのなかにおいて動的にとらえられ、またかならずしも実体システムに限定されず、概念構成システムの場合も含まれる。
 このシステムは、構造的な観点から「剛構造システム」と「柔構造システム」とに分類できる。システムにおける合目的性がきわめて剛く貫徹されていて定められた目的を論理的に遂行するメカニズムをもつシステムが前者であり、後者は環境適応性があり、環境によって構造そのものが変わっていくようなシステムである。一般に使われている機械および機械系は剛構造であり(例、電話通信システム)、生物および生体系はシステム工学的にいえば柔構造である。ごみ処理システムのような社会システムでは、今後とくに柔構造性が要求されよう。[荒川 泓]

システム工学の源流

システム工学の直接の源流となったのは次の学問・技術分野である。
 第一はオペレーションズ・リサーチ(OR)である。ORは第二次世界大戦中、イギリスで潜水艦探索問題、軍需物資輸送問題など軍事作戦研究として始められ、アメリカで作戦の技法として発達した。ORは、一般にはシステムの各種作業の運用・計画などオペレーションに関する問題を分析して、その最適化についての情報をオペレーション管理者に提供するための研究である。そのための方法の一つとして線形計画法(リニア・プログラミング)linear programming(LP)が案出され、今日、広範に応用されている。LPのほか、待合せ問題queueing problem(QP)の理論、ゲームの理論theory of gamesなどが、ORの発展のなかでシステム解析の手段としてもたらされた。工場において材料を加工して製品とする作業過程で生ずる待合せの現象は全体の作業能率を規定する重要な要因であり、その発生から解消までのメカニズムを一般化し理論化したのがQPである。ゲームの理論もORの一分野として展開され、体系化された。
 第二は、シャノンの「情報理論」とウィーナーの提唱した「サイバネティックス」である。1948年に発表されたこの二つはその後の情報科学体系成立の土台となるが、システム工学においても情報伝送の問題および制御の問題が重要な契機として存在し、かつシステムそのものが、本来、サイバネティックスの基本モデルとして把握されるところにシステム工学が成立するのであるから、源流の一つにあげられて当然であろう。
 第三は基礎数学の発展である。集合論、確率論、線形代数、位相幾何学、数理論理学などの数学分野がシステム工学展開の不可欠の基盤となった。とくにチューリング機械の理論は人間の論理活動の分析に大きな役割を果たし、コンピュータ誕生の土台ともなった。
 第四はコンピュータ技術の発展である。システム工学の手法を産業その他一般の問題に適用するに際し、膨大な計算が要求され、それはコンピュータの実用化によって可能となり、現実化されたということができる。
 以上の4点の分野の発展が集約され、そこからシステム工学の全体像が浮かび上がる。[荒川 泓]

システム工学の手法


システム・アプローチ
システム工学はシステムの開発・製作・運用を、その目的に向けて合理的かつ効率的に遂行するための総合的な技術体系であるので、それは一般にシステムの開発、設計・製作、運用の各段階を通じて適用される。このシステム工学適用の全過程の基本にある考え方が、いわばシステム工学の基本的方法であり、システム・アプローチとよばれ、それはシステムの概念・基本的構成・性質の立場から対象をとらえ、解析し、その結果を総合して、対象をシステムとして総合・構成・評価し、目的を達成するうえでもっとも効率的なシステムとして具体化する、という思考方法である。それと関連して、システム工学の直接の理論的基盤・基礎理論となる学問をシステム理論といい、分野別には、情報理論、決定理論、待ち理論、オートマタ理論、シミュレーション理論、ネットワーク理論、制御理論、最適化理論などであり、情報科学の体系の個別分野と重なるところが大きい。
 システム工学適用の過程で、システム・アプローチの考え方をもっとも端的な形で具体化しているのがシステム解析・システム設計であり、その全体のなかでとくに重要な位置を占めるのがシステム解析である。そしてそこで具体的手法として重要な役割を果たすのが、シミュレーション、最適化、評価evaluationの三つの手法である。[荒川 泓]
システム解析
システム解析は、目的にかなう最適システムを設計・製作するために必要な情報を可能な限り得ることを目的として、おおよそ、目的システムの解析・選定、システムのモデル化、システムの最適化、解の評価、の4過程として進められる。モデル化、最適化段階がその中心となるが、最適化段階などではシミュレーション技法が駆使されることが多い。[荒川 泓]
システムの最適化手法
(1)システム工学における最適化 最適化問題は本来、普遍的な問題であり、数学的にいえば関数の最大・最小化であり、変分法である。工学一般にとってそれはつねに一つの基本問題であるが、今日いわれるような意味で明確に意識され、理論化されるようになったのはOR以来のことである。システム工学的にいえば、システム解析において、そのモデルに関するシステムの目的関数を、制約条件下で最大または最小にすることがシステムの最適化である。最適化手法は、その問題中に時間的因子を含まない静的最適化と、時間が重要な因子として含まれる動的最適化とに大別される。後者は、その変数が時間的に変化する場合であり、最適制御の概念と本質的に結び付く。前者の典型ともいうべきものがLPであり、数理計画法の一つとして普及し、システム工学のみならず近代経済学の手法として使われている。
(2)線形計画法(LP) 数理計画問題のうちで、変数xj : j=1, 2,……, nについてすべての制約条件式gi(x1, x2,……, xn) : i=1, 2,……, mが線形であり、目的関数f(x1, x2,……, xn)も線形であるようなものがLP問題であり、その解法をLPという。f(x1,……, xn)およびgi(x1,……, xn)の少なくとも一方が非線形関数である場合が非線形計画問題である。したがってLPは数理計画法のなかで、数学的には特殊なケースであるが、もっとも基本的なものであり、線形代数学を用いることにより理論体系として完成されていて、今日、LPが圧倒的に多く用いられている。
 LPの適用例として「割当て問題」の一つを考えてみる。n台のコンピュータPiとn種のジョブQj : i, j=1, 2,……nとがあり、PiをQjに用いたときの出来高がcijになることがわかっているとする。そのとき出来高の総額を最大にするにはコンピュータを各ジョブにどのように割り当てたらよいか、というのがこの問題である。割当てを表現する変数xijを、PiをQjに割り当てたとき1となり、そうでないときは0であるようにとる。このとき目的関数zは

と表現され、LP問題として次のように定式化される。すなわち「条件

のもとで、

なる関数zを最大化するようなxijおよびそのときのzの値を求める」。これを解く数学的方法は完全に手順化されており容易である。この問題は、多数の商品を多くの供給地から需要地へ輸送する際の総輸送コストを最小にするような輸送計画をたてるという、Hitchcock型輸送問題として知られているLP問題と、計算アルゴリズムとしてまったく同様の問題である。LPは、与えられた資源で最大効果を求める場合、あるいは最小費用で目的を達成するにはどうするかといった場合などに一般に有効な方法として広く使われている。
(3)動的計画法 動的最適化の手法としては、古典的変分法、ポントリャーギンの最大原理などとともに、ベルマンRichard Bellman(1920― )が開発(1957)した動的計画法dynamic programming(DP)があげられる。これは多くの継続する段階からなっており、各段階にその過程を決定する変数があり、各段階でその変数の値を決めて次の段階に移行するような過程(多段決定過程)を対象とする最適化法である。DPは、多くの都市を通過して物資輸送するというような都市交通問題、最小の燃料で所定の軌道にロケットを到達させる運行方法の問題などに、一般に多変数制御システムのパラメーター決定・設計方法として使われ、最適制御問題に適用されうる。
(4)ゲームの理論 LP、DPなどの最適化手法に対比して、競争相手がいる場合の最適化手法がゲームの理論である。フォン・ノイマンは1928年に「室内ゲームの理論」を発表し、44年O・モルゲンシュテルンとともに『ゲームの理論と経済行動』を著し、理論体系を確立した。ゲームの理論は、室内ゲームと経済・政治・軍事上の対立関係とは緊密な類似があるという考えに基づいて出された。ゲームの理論とLPとは完全な結び付きがあり、一方の問題を他方の問題に還元して計算できることが1950年前後には明らかにされた。
(5)CPM/PERT分布(ネットワークシステム)など 多数の作業からなる大規模プロジェクトの進行状況を把握・管理してつねに有効適切な手だてを講ずるための系統的・組織的手法としてcritical path method(CPM)/program evaluation and review techniques(PERT)分析がネットワークシステムの観点から案出された(1957~58)。PERTは、各作業の先行関係を表示するアロー・ダイアグラム(PERTネットワーク)を作成して解析を進めていくもので、ポラリスミサイル開発計画に適用され、今日では日程計画の管理手法として広く用いられている。
 以上の最適化手法・理論は、基本的にすべてOR手法として発達してきた。これらと並んでコンピュータの発達があり、コンピュータ・シミュレーションによる最適化も広く行われるようになった。シミュレーション・モデルをコンピュータ・プログラムとしてつくり、考えられる各種の案をすべてモデルにかけ、シミュレーションを行って目的関数を計算し、もっともよいものを選ぶのである。以上に加えて、近年combinatorial(組合せ)問題、つまり組合せ最適化問題も研究が進み、使用されつつある。[荒川 泓]
評価、テクノロジー・アセスメント
システム工学では、その適用の各段階において評価evaluationが行われる。本来、目標設定がなんらかの価値観に基づいて行われているから、当然そこには評価がなされている。そしてシステム開発の各段階において、達成すべき目標に対して事前・中間・事後の評価、さらに追跡評価が行われる。システムの最適化を行うためには定量的に最適判定を行う尺度が必要であり、評価の定量化が要求される。目的関数が定まればそれは同時に評価関数となるが、動的最適化などの場合は一つの実数を評価量として定める。これを評価指数という。何を目的関数・評価指数に選ぶかでシステムの性格が定まり、そこに明らかに価値観が働く。輸送・交通システムの場合などを考えれば明らかであろう。評価とかかわってシステムの信頼性の問題がある。たとえばシステムに冗長性redundancyをもたせれば、一般に信頼性は向上するが費用は増大する。システム工学では信頼性の定量化のために種々のくふうがなされているが、信頼性と経済効率とは本質的に二律背反性があることを忘れてはならない。公害問題の拡大とともにテクノロジー・アセスメントがしばしば問題とされるが、それも要するに以上のシステム工学における評価の問題である。何を評価指数とするか、どの程度の時間尺度で評価体系を構成するかを定めるとき、そこには価値観の問題が入るし、それがそのテクノロジー・アセスメントの性格を決めるといってよい。
 システムが巨大化するほど、システム工学の役割の重要性は増大し、同時にその目的設定に対する社会制度・価値観からの影響力も強くなる。それはしばしばその適用の是非・成否を支配するものとなろう。システム工学が軍事技術の体系として発達してきた歴史をもつものであること、またシステム工学は一つの有効な手法・技術の体系であることを今後の発展・展開において忘れてはならないであろう。[荒川 泓]
『秋山穣・西川智登著『システム工学』(『新編機械工学講座33』1977・コロナ社) ▽渡辺茂編著『システムとはなにか』(『システムの世界1』1974・共立出版) ▽三浦宏文著『システムと評価』(『システムの世界4』1974・共立出版) ▽西川一・三宮信夫・茨木俊秀著『最適化』(『講座情報科学19』1982・岩波書店)』

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