ポントリャーギン(その他表記)Lev Semyonovich Pontryagin

デジタル大辞泉 「ポントリャーギン」の意味・読み・例文・類語

ポントリャーギン(Lev Semyonovich Pontryagin)

[1908~1988]ソ連数学者14歳のとき爆発事故で失明した。位相群・位相体やリー群の位相的研究など、位相幾何学発展に貢献した。著「最適制御の数学理論」「連続群論」など。

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改訂新版 世界大百科事典 「ポントリャーギン」の意味・わかりやすい解説

ポントリャーギン
Lev Semyonovich Pontryagin
生没年:1908-88

ソ連の数学者。モスクワ南西約400kmにあるトルブチェフスクで生まれる。14歳のとき爆発事故により完全に失明したが,母の助力に支えられて勉学し,1925年モスクワ大学に入学した。P.S.アレクサンドロフに師事して,19歳で位相幾何学の双対定理に関する論文を発表,29年に卒業した。以後,次元論や双対定理に関して優れた業績をあげ,次いで位相群,位相体やリー群に関する画期的研究を行い,35年にモスクワ大学教授となった。40年ころからはホモトピー論や多様体のホモロジー論を研究し,その後の位相幾何学の発展に大きな貢献をした。また,早くから振動論や自動制御に現れる常微分方程式にも関心をもっていたが,52年以来それらに関するセミナーを主宰し,いわゆる〈ポントリャーギンの最大値原理〉の発見などの業績をあげた。著書《連続群論》(1938)は名著ほまれが高い。
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ポントリャーギン」の意味・わかりやすい解説

ポントリャーギン
Pontryagin, Lev Semënovich

[生]1908.9.3. トルブチェフスク
[没]1988.5.3.
ソ連の数学者。家庭が貧しかったので,4年制の小学校で初等教育を受ける。 14歳のとき爆発事故のため失明。以後,母のタチャーナが彼のために本を読んだり,ノートをつくったりしたという。 1925年,モスクワ大学入学。数学のあらゆる方面に興味を示し,なかでも位相幾何学に深い関心をもち,P. S.アレクサンドロフの指導を受ける。モスクワ大学卒業 (1929) ,モスクワ大学教授 (35) 。学生時代すでにアレクサンドロフの双対定理を精密化した論文を発表。その後,次元論,位相群論と研究を進め,これらの成果は歴史的名著『連続群論』 (38) にまとめられた。この本は 41年にスターリン賞を受けた。 30年代に入ると,常微分方程式の研究も始め,52年から振動論,自動制御理論のセミナーを主宰。 56年から始る自動制御の最適過程の研究のなかで,いわゆる「ポントリャーギンの最大値原理」を発見。 61年には,常微分方程式とその応用の研究によってレーニン賞を与えられた。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「ポントリャーギン」の意味・わかりやすい解説

ポントリャーギン
ぽんとりゃーぎん
Лев Семёнович Понтрягин/Lev Semyonovich Pontryagin
(1908―1988)

ソ連の数学者。モスクワ生まれ。13歳のときの爆発事故で両眼失明。モスクワ大学でアレクサンドロフに位相幾何を学び、1935年からモスクワ大学とステクロフ研究所に属した。位相群論のポントリャーギン双対性や位相幾何のポントリャーギン特性類などが有名で、『連続群論』(1938)や『位相幾何学の基礎』(1947)は各国語に翻訳されている。一方、物理学者のアンドロノフAleksandr Andronov(1901―1952)と協力して微分方程式の応用を研究、のちに『最適過程の数学的方法』(1961)でレーニン賞受賞。ソ連の数学界においては、反ユダヤ志向の持ち主として知られた。

[森 毅]

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世界大百科事典(旧版)内のポントリャーギンの言及

【最大原理】より

…自動制御系の設計法の一つに最適制御があるが,最大原理は最適制御の基礎となる定理で,1950年代の終りにソ連の数学者ポントリャーギンらによって確立された。この原理は制御系の設計法に新しい視点を導入し,60年代の現代制御理論の発展の原動力となった。…

【最適制御】より

…線形計画法や非線形計画法と対比されるが,静的な最適化にくらべ動的な最適化ははるかに複雑な問題で,かなり高度の理論とめんどうな計算を必要とする。最適制御の理論的基礎は,ソ連の数学者L.S.ポントリャーギンによって導かれた最大原理とアメリカの数学者ベルマンRichard Bellmanによって提案された動的計画法にある。両者は1960年前後にほぼ同時に確立された。…

※「ポントリャーギン」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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