改訂新版 世界大百科事典 「シマウマ」の意味・わかりやすい解説
シマウマ (縞馬)
zebra
別名ゼブラ。暗色の縞模様をもつ奇蹄目ウマ科のうちの2亜属の哺乳類の総称。ウマの名があるが,むしろロバに近く,体型,鳴声などロバによく似ている。アフリカ東部から南部にかけての草原,山地に分布し,体型や縞模様の違いから4種に分類される。ふつう,1頭の雄をリーダーとし,複数の雌と子を含む十数頭の家族群で生活し,別に雄どうしが集まった独身雄群もある。群れは特定のテリトリーをもたずに他の群れと行動圏を共有し,多くの群れが集まって巨大な群れをつくることもある。しかし,これによって群れのメンバーが入れ替わることはない。草の中でも丈の低い草を常食とし,タンザニアのセレンゲティ国立公園では草を求めて数万頭の季節的な移動が見られる。ただし,グレービーシマウマでは,永続的な群れはつくらず,単独生活をするか,あるいは雄,雌がそれぞれ別に集まって,一時的な群れをつくる。雌は350~390日の妊娠期間の後,雨期の少し前に1子を生む。子は誕生後すぐに歩けるようになる。時速60kmに達する高速で走ることができるが,ライオンやハイエナなどの捕食者にしばしばとらえられる。ライオンなどに追われると,群れのリーダーは,群れの最後尾を走り,群れを守る。敵に襲われると群れのメンバー全員が後向きになって円陣をつくり後足のひづめでけって防衛するというが疑わしい。
サバンナシマウマEquus burchelliはエチオピア南部から東アフリカにかけてのサバンナに広く分布する。後半身の縞模様の幅が広く,縞模様が腹部にまでのびるのが特徴。シマウマとしては耳が短い。肩高1~1.3m,体重220~300kg。グレービーシマウマE.grevyiはケニア北部,エチオピアに分布し,体は肩高1.4~1.5mともっとも大きい。体重350~450kg。幅の狭い細かな縞模様をもち,腹部は白色。耳は大きく丸く,よく目だつ。おもに草を食べるが,他のシマウマに比べて木の葉を食べる傾向が強い。ヤマシマウマE.zebraはアフリカ南部の山岳地帯にすみ,肩高1.2~1.3m,体重270kg。縞模様はグレービーシマウマに似るが,体の縞が臀部(でんぶ)にまで達するのが特徴。ケープヤマシマウマE.z.zebraとハートマンヤマシマウマE.z.hartmannaeの2亜種に分けられ,前者は絶滅寸前の状態にある。クアッガE.quaggaは体の前半部にのみ縞模様をもった特異なシマウマ。南アフリカに生息したが,開発のため,1860-70年ころ絶滅し,飼われていた最後の個体も83年アムステルダム動物園で死んだ。
執筆者:今泉 吉晴
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報