機械的な手法によって軸内の鉛芯(しん)を出し入れする、替芯式の筆記具。1822年にイギリスで単動式の繰り出し鉛筆がつくられたが、1838年にアメリカのキーランが「エバーシャープ」の名で製作し、販売したのが最初である。シャープの名はここからおこっている。日本へは1877年(明治10)に輸入された。国産では、1914年(大正3)に早川徳次(シャープ(株)の創業者)が、「早川式繰出し鉛筆」を製造したのが最初である。従来は鉛筆と同じ芯が用いられていたが、1962年(昭和37)に日本で初めて合成樹脂芯とよばれる、細くてしかも強い芯が開発されたことにより、実用品として一般に定着した。
構造には大別してノック式(ばね押し出し式)、回転式、ドロップ式がある。一般的なのはノック式で、本体の一部を操作することによりばねが発動し、芯が押し出されて固定される方式。おもなものに、軸頭のノブを操作するノブノック式、軸の中央部にあるノブを操作するサイドノック式、キャップをスライドさせることにより芯を繰り出すキャップスライド式、筆記部と芯の両方の出し入れをノック操作でできるダブルノック式などがあり、予備芯が自動的に追従してくるものが多い。回転式は、らせんパイプを伝わって芯を出し入れするもので、単らせん式、交差らせん式(二色式)、先回し式がある。ドロップ式は、芯を適当な長さに出して固定する方式で、レッドホルダーとかドロップペンシルとよばれ、太芯の製図用である。最近では自動的に芯が出てくるノンストップ方式もある。芯径は0.3、0.5、0.7、0.9ミリメートルの4種類が一般的で、硬度は2B~4Hまであり、0.5ミリ芯にその種類が多い。
[野沢松男]
筆記具の一つ。1837-38年ころ,アメリカのキーランが〈エバーシャープ〉(つねにとがっている)の商標で発売したのが最初といわれる。1877年(明治10)に日本に渡来し,東京浅草の飾り職人が模造製作した。当初は〈繰出鉛筆〉と呼ばれて,手工業生産であったが,大正期に機械生産へと移る。その時の製造業者のひとりに早川徳次(電気機械会社シャープの創始者)があげられる。1915年に売り出された〈スクリュウペンシル〉〈プロペラペンシル〉が翌年〈エバレディシャープペンシル〉と改称され,以後日本ではシャープペンシルが総称となる(英語ではメカニカル・ペンシル)。1960年に合成樹脂芯が日本で開発され,芯径0.2mm,あるいは0.1mmのきわめて細いものが製造可能になった。これは合成樹脂を結合剤として使い,高温で焼いて炭素を残したもの。80年には100円の低価格シャープペンシルも出現して小学生にまで普及し,生産量は1979年の1.4倍(約9000万本)に増加した。
執筆者:永田 桂子
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