シルック族(読み)シルックぞく(その他表記)Shilluk

改訂新版 世界大百科事典 「シルック族」の意味・わかりやすい解説

シルック族 (シルックぞく)
Shilluk

アフリカ北東部,スーダン南部のナイル川西岸に住む種族で,文化的にはナイロティック民族に属し,ナイル・サハラ語族のシャリ・ナイル諸語の一つを話す。人口は1970年代中ごろで12万人。定住農耕民で,主食モロコシのほか,シコクビエ,オクラ,マメ類,ゴマ,スイカを栽培する。また,牧畜も行い,牛,ヤギ,羊を飼う。結婚の際,夫側が妻側に支払う花嫁代償として,とくに牛が重要とされる。家畜の飼育,搾乳,狩猟は男の仕事であり,農耕は男女ともが従事する。シルック族の地域社会は父系リネージの分節構造をもち,その社会の支配的リネージから首長を選出する。また年齢階梯組織も社会の統合に大きく寄与している。
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シルック族は王国を形成するが,王に巨大な権力が集中している専制王国ではなく,多くの小王国に分立しつつ,それらが1人の王ニイカングNyikangの下に統一されている,いわば連邦王国である。ニイカングの地位はその息子たちによって継承されてゆくが,それは単に世襲という概念以上の意味をもつ。神話によると,ニイカングはこの王国の創設者の名であり,このニイカングだけがシルック王国を統治する。具体的にはニイカングは霊魂として王の死後も残り,次の継承者の体内に宿り,その身体を借りてその力をシルックに及ぼすのである。この際,ニイカングを体内に宿らせる王は,自らニイカングの理想的な知力体力武力を持っていることを要求される。したがって老いて衰えることなどは許されず,もしそうなれば,J.G.フレーザーが《金枝篇》で述べたような〈王殺し〉が行われ,次の継承者が選ばれる。こうしてシルック王国は常に創設時の栄光ある国力を持続すると考えるのである。
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出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

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