シルック(読み)しるっく(その他表記)Shiluk

日本大百科全書(ニッポニカ) 「シルック」の意味・わかりやすい解説

シルック
しるっく
Shiluk

アフリカの南スーダンナイル川流域のマラカルを中心とする地域に住む民族。言語はナイル・サハラ語系で、1990年代で約13万人の人口をもつ。男子の平均身長は約180センチメートルで、女子も比較的長身。100以上に分かれた父系出自集団王権によって統合されている。生業としてトウモロコシ、麦を主とする農耕を行い、ウシヤギヒツジを飼育する。ウシは彼らにとって非常に重要であり、財産の指標とされ、贈り物や罰金はウシで支払われる。そのほか、漁労狩猟を行う場合もある。16世紀に伝説的英雄ニイカングが諸民族を征服・統合して王国を樹立したといわれ、現在でもその体制を維持している。彼らの王は単なる統治者ではなく、宗教的意味をもつ「神聖王」の代表的な例である。王はニイカングの化身であり、神聖で侵すことのできない存在とされる。そして王はその体内に住民の全生命、全精神を宿しているとみなされ、したがって王は清浄かつ肉体的に完全な状態を保たねばならない。王が病気になればウシも作物も住民も病気になるとされ、王が老いたり病気になったりした場合は王を殺すことによって災害を未然に防いだと伝えられている。これがフレーザーが『金枝篇』で述べた、いわゆる「王殺し」であるが、実際に行われたという具体的証拠はない。王が死んで後継者が即位する前にはニイカングは木像にその身を移し、木像がニイカングの化身となる。そしてニイカングはけっして死なないとされ、「万一、ニイカングが死ねば、シルックは滅びるだろう」といわれている。その他特徴としては、頭髪をナイル川の泥で固め、帽子のような形をつくるという習慣がある。

[豊田由貴夫]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

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