コンピュータのネットワークシステムで、ユーザー側の機器の機能を必要最低限に絞ったもの。また、そのシステムで使われるパソコンや専用端末。シンthinとは英語で「薄い」「細い」を意味する。
ファイルの管理やアプリケーション・ソフトウェアの運用といったおもな作業はサーバー側のコンピュータ上で行う。そのためクライアント端末は、ネットワークへの接続をベースにデータの入力や表示など最低限の機能に特化している。シンプルな構成であるため導入時のコストも低く、メンテナンス費用も抑えられる。これによりTCO(Total Cost of Ownership:コンピュータシステムの導入や維持、管理にかかる全コスト)を削減できるとされる。また、データをクライアント側に保存しないため、セキュリティ強化にもつながり、企業の情報漏洩(ろうえい)防止策として評価されている。
対比する語として、ファットクライアントfat clientとリッチクライアントrich clientがある。ファットクライアントとは、一般的なパソコンのイメージであり、データ管理にネットワークを利用する程度で、基本的な処理は各端末側で行う。クライアント単体(スタンドアローン)で使えるが、さまざまな機能や機器を搭載しているため、コストも上がる。また、アプリケーションのインストールやデータのバックアップなどをユーザーごとに行う必要があるため、維持管理の手間も多い。
一方、シンクライアントにもサーバー側の負担増、作業環境が貧弱、ネットワークに接続しないと作業できないといった問題が指摘されて、登場したのがリッチクライアントである。必要に応じてアプリケーションやデータをダウンロードして作業を行う高機能のネットワーク端末を表す。クライアント側の性能が高いことで作業効率があがるだけでなく、アプリケーションのバージョンアップなどをサーバー側で行えるなど維持管理も容易である。また、サーバーの能力や稼働状況に左右されにくい、ネットワークへの接続がなくてもとりあえずスタンドアローンで使えるなどのメリットがある。
ただし、ファットクライアントとリッチクライアントの違いは明確ではない。定義は非常にあいまいで、同義に使われることもあり、一般的に、ファット(太った)とリッチ(富んだ)という表現から、イメージのよしあしで使い分けることが多い。
[編集部]
(佐橋慶信 ライター / 2010年)
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