アメリカの動物文学作家、画家。スコットランドに生まれ、6歳から数年間をカナダの奥地で過ごし、自然に親しんだ。のちに、トロント、ロンドン、パリで博物学と絵画を修業し、1893年アメリカに渡った。若いころから野生動物に関する観察記録をもとに動物物語を書いていたが、1898年に8編の作品を集めた『私の知っている野生動物』を出版、一躍有名になり、この書物も不朽のベストセラーとなった。その後も次々と、『シートンの動物記』として知られる動物文学の傑作を発表し、1928年にジョン・バロウズ・メダルを受けた。その作品には、自らが描いた多くの挿図が添えられている。自然保護や青少年の自然教育にも功績があり、ボーイスカウトの創設にも参画し、1910~1916年その初代団長を務めた。動物文学のほかに、動物の生態に関するより博物学的な著作『狩猟動物の生活』(1925~1928)、自叙伝『芸術家・博物学者の足跡』(1940)がある。
[八杉貞雄]
アメリカの作家,ナチュラリスト,インディアン研究家,画家。イギリスに生れ,カナダで青年期を過ごしてのちアメリカに移住。挿絵画家としてスタートしたが,動物物語《私が知っている野生動物》(1898)で作家の地歩を固め,以後,一般に《シートン動物記》の名称で親しまれている動物物語をつぎつぎと発表。同時に動物とインディアンについての野外調査を進め,多くの著作を残した。動物の生態に関する4巻の著作《狩猟動物の生活》(1925-28)でエリオット・ゴールド・メダルを受賞。自然にとけこんで暮らしたインディアンの生活に共鳴し,その生き方をまねた青少年教育運動をおこしたが,のちにこれがアメリカン・ボーイ・スカウトとなり,その初代団長をつとめた。講演者としても活躍し,1900年代初頭に野生動物のための保護区を作ることを提唱。アメリカにおける自然保護活動の創始者の一人。著書には自作の絵をそえ,動物画家としても高い評価を得ている。
執筆者:藤原 英司
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…当時のフランスの官僚的アカデミズムの偏見に抗しつつ,1個の在野的〈科学の詩人〉がかちとった自然観察の成果を示すとともに,すぐれた動物文学の古典としてひろく愛読されるにいたった。古来のさまざまな動物寓話と,いわば倫理学の侍女として発達してきた動物学の系譜は,この《昆虫記》や,日本で《動物記》として知られているE.T.シートンの動物文学などによって,初めて近代的な科学的・文学的総合にまで高められたといえるが,これら動物文学になお残存する時代おくれの擬人主義には警戒を要する。しかしシートンの《動物記》が,その科学的観察の背後に,擬人的英雄主義のひずみを蔵しているのにくらべ,《昆虫記》には擬人主義をつとめて修辞的擬人法の範囲内にとどめようとする努力が見られ,その点,本書の科学書としての価値を過小評価してはならない。…
… そのほかの諸国からひろうと,スイスのJ.シュピーリの《ハイジ(アルプスの少女)》(1881)とウィースJ.R.Wyssの《スイスのロビンソン》(1812‐13),ハンガリーのF.モルナールの《パール街の少年たち》(1907),チェコスロバキアのK.チャペックの《童話集》(1932)が見落とせない。【瀬田 貞二】【菅原 啓州】
[カナダ,オーストラリア,ニュージーランド]
カナダにはL.M.モンゴメリーの《赤毛のアン》(1908)があるが,本領はE.T.シートンやロバーツG.D.Robertsによって19世紀末から開拓された動物物語にあり,その伝統はモワットF.Mowat《ぼくのペットはふくろう》(1961),バンフォードS.Bunford《信じられない旅》(1977)に息づいている。オーストラリアの近年の児童文学の隆盛はめざましい。…
…アメリカでは全博物図鑑中の最大傑作といわれるJ.J.オーデュボン《アメリカの鳥類》がほぼ同時期に出版されている。一方,博物学書は文芸作品と同じ感覚でも鑑賞されるようになり,G.ホワイトの《セルボーン博物誌》を先駆けとして,J.H.ファーブル《昆虫記》やE.T.シートン《動物記》のような人気作品が書かれた。 20世紀にはいると博物学は,生物学プロパーというよりもむしろ専門家でない自然愛好者が手がける分野と考えられるようになり,記述の学あるいは自然観察の学の全般的衰退をみるに至った。…
※「シートン」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
働き手が自分の働きたい時間に合わせて短時間・単発の仕事に就くこと。「スポットワーク」とも呼ばれる。単発の仕事を請け負う働き方「ギグワーク」のうち、雇用契約を結んで働く形態を指す場合が多い。働き手と企...
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