改訂新版 世界大百科事典 「ジュウニシチョウチュウ」の意味・わかりやすい解説
ジュウニシチョウチュウ (十二指腸虫)
hookworm
線形動物双腺綱の円虫目鉤虫科Ancylostomidaeに属する寄生虫の総称。1838年ドゥビニA.Dubiniがミラノではじめてヒトの小腸から見いだしたものに,43年にAncylostoma duodenale(種小名は〈十二指腸〉の意)と命名したので十二指腸虫の名があるが,実際には十二指腸よりも小腸中部から上部(主として空腸)に寄生する。コウチュウ(鉤虫)ともいう。ヒトに寄生する種類のうち日本で重要なものは,ドゥビニにちなむズビニコウチュウおよびアメリカコウチュウの2種である。また,イヌやネコを固有宿主とするセイロンコウチュウ,ブラジルコウチュウ,イヌコウチュウなどもヒトに寄生することがある。いずれも体長10~20mm,淡紅色,または腸管内で摂取した血液のため赤色を帯びている。口腔内には種によって鋸歯状の歯牙または板状の歯板を有し,小腸粘膜への咬着を容易にする。雄虫は尾端に交接囊を有し,交尾の際これで雌虫の体を把握する。成虫の寄生は貧血の原因となる。また,幼虫が皮膚から侵入した場合,かぶれや皮膚爬行症を起こすことがある。
→アメリカコウチュウ →コウチュウ →ズビニコウチュウ
執筆者:小島 荘明
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報