翻訳|hookworm
線形動物門双腺(そうせん)綱円虫目鉤虫科の寄生虫の総称。十二指腸虫といわれたが、これは鉤虫が初めて発見されたとき、たまたま十二指腸にいたためで、その後、寄生部位は空腸上部とわかり、現在では鉤虫とよばれる。日本ではヒトにズビニ鉤虫Ancylostoma duodenaleとアメリカ鉤虫Necator americanusがみられ、これらは熱帯から温帯にかけて広く分布している。また、家畜などにも鉤虫は寄生し、イヌにはイヌ鉤虫Ancylostoma caninumがみられる。
ズビニ鉤虫、アメリカ鉤虫ともに体長は10ミリメートル前後で、ズビニ鉤虫のほうがやや長くて太い。口腔(こうこう)は袋状で、その中にズビニ鉤虫では2対の鋭い歯牙(しが)を、アメリカ鉤虫では1対の歯板(しばん)を備え、これによりヒトの腸粘膜に咬着(こうちゃく)している。雄は雌よりもやや小さく、尾端に交接嚢(こうせつのう)をもつ。卵は糞便(ふんべん)とともに排出され、外界で幼虫が孵化(ふか)し、2回脱皮して感染力を有する感染型幼虫となるが、感染型幼虫は2回目の脱皮鞘(だっぴしょう)に包まれている。ヒトへの感染は経皮あるいは経口的に行われる。ズビニ鉤虫は主として経口的に、アメリカ鉤虫は主として経皮的に感染する。経皮感染では、畑仕事などの際、感染型幼虫が手足の皮膚に触れると皮鞘を脱ぎすてて侵入し、血流やリンパ流にのって心臓、肺臓へ達し、肺胞を突破し、さらに気管、喉頭(こうとう)、咽頭(いんとう)、食道、胃を経て小腸上部に到達する。経口感染では、生野菜などとともに感染型幼虫が摂取され、胃または小腸上部で脱皮する。その後一時、小腸粘膜内で発育したのち小腸内に入る。いずれの経路でもヒト体内でさらに2回脱皮し、感染後1~2か月で成虫になる。ズビニ鉤虫では小腸粘膜内の幼虫の一部が血流に乗って肺や気管に入り、のどのかゆみや咳(せき)などの原因となる(若菜病)。成虫は小腸上部の粘膜に咬着して吸血するため、貧血や消化器障害などの症状をおこす。ズビニ鉤虫1匹の1日当りの吸血量は0.2cc、アメリカ鉤虫は0.03ccで、このため病害性はズビニ鉤虫のほうが大きい。ズビニ鉤虫では30匹以上、アメリカ鉤虫では150匹以上寄生すると症状が出るという。また、幼虫が経皮感染の際、侵入局所にかぶれをおこすことがある。
イヌ鉤虫は、イヌ、キツネ、オオカミなどの小腸に寄生し、体長は雄で8~12ミリメートル、雌で15~20ミリメートル、口腔には3対の歯牙がある。感染経路はヒトの鉤虫と同じく感染型幼虫の経皮、経口感染のほか、母イヌの体組織にいる幼虫が胎盤を経由して胎仔(たいし)に移行したり(胎盤感染)、母乳を経由して子イヌに感染したり(経乳感染)することもある。イヌ鉤虫の病害は子イヌに著しく、その主体は貧血である。
[町田昌昭]
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
年齢を問わず、多様なキャリア形成で活躍する働き方。企業には専門人材の育成支援やリスキリング(学び直し)の機会提供、女性活躍推進や従業員と役員の接点拡大などが求められる。人材の確保につながり、従業員を...
10/29 小学館の図鑑NEO[新版]動物を追加
10/22 デジタル大辞泉を更新
10/22 デジタル大辞泉プラスを更新
10/1 共同通信ニュース用語解説を追加
9/20 日本大百科全書(ニッポニカ)を更新