スターチス(その他表記)sea lavender
Limonium(=Statice

デジタル大辞泉 「スターチス」の意味・読み・例文・類語

スターチス(statice)

イソマツ科イソマツ属一年草または多年草総称。葉は根際から出る。よく分枝し、枝の上部一面に小花がつく。地中海沿岸地方の原産で、120種ほどが知られ、観賞用の切り花ドライフラワーにする。

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精選版 日本国語大辞典 「スターチス」の意味・読み・例文・類語

スターチス

  1. 〘 名詞 〙 ( [ラテン語] statice による ) イソマツ科の多年草。地中海沿岸地方原産で観賞用に各地で栽培され、栽培上は秋まき一年草として扱われることが多い。高さ五〇~八〇センチメートル。冬には長さ約三〇センチメートルの披針形で縁が波状に中裂する葉を根ぎわに多数つけてロゼット状をなし、春に茎を直立する。茎は三~五枚の翼があり、よく分枝し、披針形の小さな葉をつける。茎の先は一方に傾き、上側に、数個の小花からなる小穂を並べてつける。花冠は白色膜質、萼(がく)が花冠のように見える。この種と同じイソマツ属に属する植物のうちで、観賞用に栽培されるものの総称として用いられる場合もある。はなはまさじ。

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改訂新版 世界大百科事典 「スターチス」の意味・わかりやすい解説

スターチス
sea lavender
Limonium(=Statice

イソマツ科イソマツ属Limoniumには180種ほどが知られ,世界中の海岸や内陸乾燥地域に広く分布している。花卉園芸で切花やドライフラワーに多く用いるスターチスは,この属のものである。リンネが記載した広い意味のスターチス属Staticeは,研究の結果,頭状花序を有するアルメリアArmeriaと巻散状円錐花序を有するイソマツ属Limoniumに分けられた。園芸界にスターチスの名が流布してから,2属に分けられたので,いまだにイソマツ属Limoniumの植物がスターチスと呼ばれている。多くの種が観賞用に栽培されるが,それらの中で重要なものに次のようなものがある。ハナハマサジ(スターチス・シニュアータ)L.sinuatum(L.)Mill.(=S. sinuata L.)は,切花や鉢植えにされる地中海地方原産の多年草であるが,一般に春まき一年草として栽培される。根生葉は波状に切れ込み,全面に粗毛がある。越冬中の苗は葉がロゼット状に平開しているが,春には立ち,3~5列の有翼の花茎を抽出する。草丈は50~60cm。花は3~4花,重なってついた小穂が1列に並ぶ。一見,紫・白・ピンク・紅・黄色などの花のようにみえるのは萼片で,この中に乾膜質で白い花をつけるが,目だたない。ニワハナビスターチス・ラティフォリアL.latifolium Kuntze(=S. latifolia Smith)は,旧ソ連南部,カフカスからブルガリア地域原産の多年草。草丈50cm。根生葉はへら形で大きく,直立した花茎は細かく多数分枝して,灰青紫色の小花を7~8月に密生する。ダッタンハマサジL.tataricum(L.)Millは,シベリア,カフカス地方原産の耐寒性多年草。矮性(わいせい)になったものはとくにスターチス・インカーナvar.nanum Hort.(=S. incana Bieb.)と呼ばれ,栽培される。草丈20~30cm。小花は白藤色,花期は6~7月。タイワンハマサジ(スターチス・シネンシスL.sinense Kuntze(S. sinesis Girard)は,台湾原産の多年草。高さ30cm。5~6月に白黄色の小花をつける。スターチス・ボンジュエリイL.bonduellii Kuntze(=S. bonduellii Lest.)は,アルジェリア原産の多年草だが,ふつう秋まき一年草として取り扱う。草丈50cm。5~6月に鮮黄色の小花をつける。スターチス・ペレジイL.perezii Hubb.(=S. perezii Staph)は,カナリア諸島原産の多年草。高さ60cm,根生葉はへら形。萼は紫青色。花冠は黄色。初夏から秋にかけて開花する。スターチス・スワロウイL.suwarowii Kuntze(=S. suwarowii Regel)は,トルコ西部地方原産の一年草。草丈40cm。花は紅紫色で,花穂は分岐して長さ15cmとなる。スターチス・カスピアL.bellidifolium Dum.(=L. reticulatum Mill.=S. caspia Willd.)は,ヨーロッパ,カフカス,シベリア原産の多年草。葉は倒卵形または披針形で根生し,7~8月に高さ15~20cmの花茎を立て,上部で多数分枝して小花をつける。萼は白色,花冠は淡紫色。低温に強く切花によいが,雨と暑さに弱い。

 ハナハマサジを栽培するには,温暖地では種子は秋まく。一年草として扱う場合は,種子は花穂の萼片に包まれているので,播種(はしゆ)にあたっては川砂とよくもんでからまく。最近は萼片を除去した種子も市販されている。日当りがよく,水はけもよい砂質土を好む。多年草として扱う場合,寒冷地では,温暖地原産の種子は越冬のために霜よけや温室内での保護が必要である。栽培に古株を利用することはほとんどないが,花後に各節から出る腋芽(えきが)を挿芽しても,小苗をつくることができる。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「スターチス」の意味・わかりやすい解説

スターチス
すたーちす
statice
[学] Limonium

イソマツ科(APG分類:イソマツ科)イソマツ(リモニウム)属の総称で、耐寒性・耐乾燥性の強い一年草または多年草。スターチスは旧属名である。台湾から旧ソ連地域、ブルガリア、地中海沿岸にかけて自生し、ほとんどが海浜生で、約120種ある。茎はよく分枝し、葉は根生する。花はごく小さく、分枝のすべてに無数につく。切り花や花壇に使われる。シヌアーツムsinuatum種は秋播(ま)きの一年草として扱われ、もっとも普通に栽培される。ハナハマサジともいう。葉は長披針(ちょうひしん)形で、5~6月、紫青または桃色の花を開く。ドライフラワーによく使われる。シネンシス種は多年草で、葉は長楕円(ちょうだえん)形でつやがあり、6~7月、淡黄色の花を開く。ラティフォリウム種は多年草で、花が無数につく姿を花火に見立て、ニワハナビの名もある。葉は緑灰色、長卵形で、7~8月、藤(ふじ)色の花を開く。また、ペレズィーは四季咲き性で、ハウス栽培で周年出荷される。

 耐寒性は強いが、日陰地や多湿地ではよく育たないので、日当りがよく、水はけのよい所に植える。繁殖はシヌアーツムは実生(みしょう)により、その他は株分けと実生によったが、近年は組織培養(メリクロン)による増殖苗が広く出回っている。

[鶴島久男 2021年2月17日]

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百科事典マイペディア 「スターチス」の意味・わかりやすい解説

スターチス

ハナハマサジとも。世界の海浜,砂漠,高山等に約150種あるイソマツ科イソマツ属(リモニウム)の多年草で,地中海地方原産。園芸的には秋まき一年草として栽培され,切花として用いられる。スターチスの名は古い学名に基づく。ダイコンに似た葉を根生し,5〜6月,3〜5の翼のある花茎に穂状花序をつけ,その片側に3〜4花重なった小穂が並ぶ。花色は黄・白・紫・紅で,芳香がある。ドライフラワーにもする。これと似たリモニウム・ボンデュエレイは全体がきゃしゃで,小穂には1〜2花,花色は黄色。このほか,広い円錐状の花序をもち青紫色の花をつけるリモニウム・ラティフォリア,それによく似て花序の幅が狭いリモニウム・ベリディフォリウム(園芸上〈カスピア〉とも呼ばれる),分枝した花序の枝がそれぞれ細長い穂状で桃色の花をつけるリモニウム・スウォロウィー,傘状に密集した花序となり,青紫色の萼に白花をつけるリモニウム・ペレジー,あるいは交雑品種など,十数種が園芸的に栽培されている。
→関連項目ハマサジ

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「スターチス」の意味・わかりやすい解説

スターチス
Limonium; sea pink

イソマツ科イソマツ属の一年草および多年草の総称。分類学上は Limonium属とされるが,園芸界では旧属名のスターチス Staticeが使われている。世界中の海浜および草原に生え,120種ほどが知られている。日本にはイソマツ L. arbusculumとハマサジ L. japonicumの2種の自生があるが,一般に花壇,鉢物,切り花などの観賞用に栽培されるのは地中海地方やカナリア諸島産の種類である。葉は常緑で全縁の種が多く,多数の葉が根生するか,または茎の頂部に集って生じる。花は夏に咲くものが多いが,秋咲きや春から秋にかけて咲くものもある。花は円錐花序をなしてつく。近縁の属にアルメリア属 (ハマカンザシなど) があるが,花序の形が頭状であることで本属と区別される。

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