スワヒリ文学(読み)スワヒリぶんがく(英語表記)Swahili literature

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「スワヒリ文学」の意味・わかりやすい解説

スワヒリ文学
スワヒリぶんがく
Swahili literature

ケニアタンザニアなどの国語であるスワヒリ語で書かれる文学作品。19世紀末頃まではおもにアラビア文字で書かれたが,その後はローマ字で書かれる。東アフリカ海岸部のスワヒリ地方には,7世紀末にイスラムが伝播しており,早くから詩作の伝統が根づいていたと思われる。古くはイスラム色の濃い詩篇と歴史伝承がおもで,ヘラクリウス皇帝の軍勢に対するアラブ人の勝利をうたった『タブクの戦いの書』が最古の現存詩篇とされ,1728年の日付がある。詩を中心とする古典期スワヒリ文学では,女性詩人ムワナ・クポナ,ケニアのパテ島に存在したスルタン国の栄華の鎮魂歌『アル・インキシャフィ(魂の覚醒)』を書いたサイイド・アブダッラー・ビン・アリ・ビン・ナシールなどが知られる。また,モンバサ出身のムヤカ・ビン・ハジ・アル=ガッサニイは詩をモスクから市場へ運び出したといわれた。つまりイスラムの教えであるパクス・イスラミカ(イスラム的平和)だけを説く内容のものから,日常身辺のさまざまな出来事や個人的な感情を託するものへとテーマを拡大し,現代文学への過渡期に重要な役割を果たした。
20世紀に入ると,古典期の伝統を受け継ぎ,それを革新して現代文学への道を開いたシャアバン・ビン・ロバートがいる。彼は詩を中心に小説,自伝伝記など多彩な分野で多数の作品を残した。ほかに詩人として M.ムニャムパラ,アムリ・アベディらが知られる。スワヒリ文学最初の探偵小説『先祖の霊場』Mzimu wa Watu wa Kale(1960)を書いたモハメド・サイド・アブッダッラー,小説家の E.ケジラハビ,モハメド・スレイマン,ドイツ領東アフリカで植民地政策に反対する現地住民が起こしたマジマジ反乱(1905~07)を素材にした戯曲『キンジェケティレ』Kinjeketile(1969)などで知られるエブラヒム・フセイン,女性の戯曲作家ペニナ・ムハンドらも活躍している。小説,戯曲,詩の分野で近年の活躍が群を抜いているのはサイド・アフメド・モハメドである。これらの作家はすべて,今日のタンザニア領出身である。現代スワヒリ文学はタンザニアが主流であるとされるが,ケニアにも学校演劇祭などの長い伝統を背景にヘンリ・クリア,ゲリション・グギなどによる戯曲作品が多数ある。(→アフリカ文学

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