セファルディム(英語表記)Sephardim

デジタル大辞泉 「セファルディム」の意味・読み・例文・類語

セファルディム(Sephardim)

離散したユダヤ人うちスペインポルトガルに定住した人々。また、その子孫。現在では、アラブアフリカアジアに住むユダヤ人をさすことが多い。

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

改訂新版 世界大百科事典 「セファルディム」の意味・わかりやすい解説

セファルディム
Sephardim

離散したユダヤ人のうち,スペインとポルトガルに居住した人々とその子孫をいう。イベリア半島に移住したセファルディムは,中世において,世界のユダヤ人の約半数を占め,ラディノLadino語を話し,アラブ・イスラム文化とも同化し,もっとも活動的であった。1492年,スペインでキリスト教への改宗を拒否したユダヤ人に対して追放令が出され(公式には1968年まで存続),約25万人が北アフリカ,イタリア,オスマン帝国に移住した。オスマン帝国ではユダヤ人を喜んで受け入れたので,テッサロニキはセファルディムの中心地となった。改宗したユダヤ人(コンベルソまたはマラーノmarrano)は,ユダヤ教をすてきれずに〈隠れユダヤ〉の生活を送っていたが,16世紀にポルトガルを経てオランダに移住した。セファルディムの移住は,その後,イギリス,アメリカ,ボルドーハンブルクなどへと広がった。中世以後,アシュケナジムとともにユダヤ人を二分する呼称となったが,数のうえでは少数で,第2次世界大戦前には,ユダヤ人口1650万のうちセファルディムは150万以下であった。なお,ナチスは,オランダでアシュケナジムとセファルディムに差をつけ,後者の〈絶滅〉を後回しにした。
執筆者:

出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

百科事典マイペディア 「セファルディム」の意味・わかりやすい解説

セファルディム

〈スファルディー〉とも。本来はスペインやポルトガルに居住し,ラディノ語を話すユダヤ教徒をさす。1452年にイベリア半島からユダヤ教徒が追放されたとき,多くはオスマン帝国領に,さらに西ヨーロッパへ移住した。現在では,イスラエルにおけるアシュケナジム以外のユダヤ人を広くさすが,このうち中東・アフリカ系(ミズラヒム)を別にする場合もある。社会的には,アシュケナジムと比較して下層にある。→ユダヤ人マラーノ

出典 株式会社平凡社百科事典マイペディアについて 情報

世界大百科事典(旧版)内のセファルディムの言及

【イスラエル[国]】より

… イスラエル政府の統計年報によれば,1996年末で総人口は576万人で,うちユダヤ人が81%,非ユダヤ人が19%となっている(イスラエルでは今なお〈ユダヤ人〉とは何か,という論争が続いており,その決着はついていないが,イスラエル国内に定住するユダヤ教徒はすべてユダヤ人とされ,イスラエル国籍を与えられる)。イスラエルに住むユダヤ人は,セファルディムと呼ばれるアジア・アフリカ系のユダヤ人と,アシュケナジムと呼ばれる欧米系のユダヤ人とに大別される。両者の数はほぼ拮抗しているが,社会的・経済的には大きな格差があり,エリート層の多くはアシュケナジムによって占められている。…

【イディッシュ語】より

…別名ユダヤ人ドイツ語,ユダヤ語。バルカン諸国や中東に居住するスペイン系ユダヤ人(セファルディム)のラディノ語Ladinoをはるかに凌ぐ,約1000万の話し手を持つとされる。その歴史を反映して一種の混合言語であるが,初期(13世紀まで)に接触した中高ドイツ語諸方言が,音韻,文法,語彙の根幹を決定しており,系統的にはゲルマン語派に属する。…

【ユダヤ音楽】より

…次いでこの賛歌のための専門の詩人兼歌手の合唱長(ハザン)が誕生し,彼らはその後,もちまえの美声による即興的な名人芸風の歌い方で会衆を魅了した。離散時代のユダヤ人は,地域により大きく分かれ,スペイン・地中海系はセファルディムと呼ばれ,中央・東ヨーロッパ系(近代にはアメリカにも移住)のユダヤ人はアシュケナジムと呼ばれる。彼らは,共同体周辺との交流の結果,その音楽様式をもそれぞれに変容させていった。…

【ユダヤ教】より

…一時,大勢力になったが,結局,余りにも厳格な律法主義に陥り,広く民衆の支持をえることができなかったため急速に衰退した。 ユダヤ人世界には,11世紀までに,スペインを中心とするイスラム教圏のスファラド系(セファルディム)と,ヨーロッパ・キリスト教圏のアシュケナーズ系(アシュケナジム)の二つの大きな文化的伝統が確立した。10世紀以降,アシュケナーズ系ユダヤ学がライン川流域地方で盛んになり,西ヨーロッパ全域に大きな影響を及ぼした。…

【ユダヤ人】より

…彼らは19世紀後半に帝政ロシアの迫害と貧困を逃れるため大量に西ヨーロッパ諸国,さらにはアメリカへと移住した。アシュケナジムと呼ばれるこれらのユダヤ教徒は,セファルディムと称され,西ヨーロッパ社会に同化しつつあったユダヤ教徒たちからも蔑視され差別された。彼ら自身やがては西ヨーロッパ社会に同化していくのであるが,その存在は近代ヨーロッパで新たにユダヤ人観が形成されていくとき,これに重大な影響を与えた。…

※「セファルディム」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

今日のキーワード

プラチナキャリア

年齢を問わず、多様なキャリア形成で活躍する働き方。企業には専門人材の育成支援やリスキリング(学び直し)の機会提供、女性活躍推進や従業員と役員の接点拡大などが求められる。人材の確保につながり、従業員を...

プラチナキャリアの用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android