ソンガイ族(読み)ソンガイぞく(その他表記)Songhai

改訂新版 世界大百科事典 「ソンガイ族」の意味・わかりやすい解説

ソンガイ族 (ソンガイぞく)
Songhai

ソンライ族Songrai,ソンゴイ族Songhoiとも呼ばれる。西アフリカを流れるニジェール川中流で大きく湾曲するあたり,マリ共和国とニジェール共和国にまたがって居住する部族。人口はマリだけでも30万に及ぶ。ミレット,稲,麦などをニジェール河岸で栽培し,牛,羊,ヤギ,ラクダロバなどの家畜を飼養する。また,ニジェール川では漁労も行う。早くからイスラムに改宗し,交易に経済上の基盤をおくソンガイ帝国を形成して16世紀には最盛期を迎えた。またトンブクトゥがイスラムの都市として繁栄した。ソンガイ社会はアラブとの混血によるアルマと呼ばれる貴族と,ガビビと呼ばれるスーダン・ニグロ系の人々とに階層分化している。また,鍛冶師,皮革工芸職人,織工などの工芸職人カーストが存在する。今日でも盛んに交易に従事し,南の森林地方で産するコーラの実を愛用する。なおトゥアレグ族の奴隷であるベラソンガイ語を話す。
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ソンガイ族」の意味・わかりやすい解説

ソンガイ族
ソンガイぞく
Songhai

マリ,ブルキナファソ,ニジェールのニジェール川沿いに分布する民族。ソンライ族 Sonlai,ソンゴイ族 Songoiともいう。人口はおよそ 100万~200万と推定される。言語はソンガイ語。形質的には,ニグロイドコーカソイドの混血型を示す。社会は職業的な専門化と階層化が高度に発達し,貴族,平民,工芸職人,グリオという吟遊詩人,元奴隷などに分かれる。 11世紀初頭にイスラム化され,15世紀後半にはアスキア・ムハンマドを君主とした西アフリカ最強のソンガイ王国を築いた。その後モロッコトゥアレグ族バンバラ族フルベ族の侵略と支配を受けたが,1893年にフランス軍が占領した都トンブクトゥは,黄金の都として有名であった。家族は一夫多妻制で地域的な親族集団のまとまりはない。男子は 12歳前後で割礼を受け,年齢組に加わる。生業は農業が主で,牧畜漁業,工芸,交易も行なう。

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世界大百科事典(旧版)内のソンガイ族の言及

【ソンガイ帝国】より

…黒人アフリカで最大の版図をもった帝国。支配部族ソンガイSonghai(ソンライSongrai)族の名をとってこのように呼ばれるが,首都ガオの名をとってガオ帝国とも呼ばれる。16世紀の最盛期には,ガオ(現,マリ共和国領)のあるニジェール川大湾曲部東部地方を中心に,その勢力は,西アフリカ西端の現セネガル共和国の地域から,金の主要な産地だったニジェール川上流の山地地方(現,ギニア共和国領),岩塩の産地テガザ(現,マリ共和国領)を含むサハラの一部,東はハウサ諸国(現,ナイジェリア北部)にまで及んだ。…

【ニジェール】より

…【端 信行】
[住民,社会]
 住民の大部分は西部のニジェール川流域と,南部のサヘル地帯に集中している。人口の多い部族をあげると,ハウサ族(54%),ソンガイ族および近縁のジェルマ族Djerma(23%),フルベ(フラニ,プール)族(10%)などで,ほかにトゥアレグ族(3%)もいる。住民の85%がイスラム教徒で,残りのほとんどは部族固有の伝統宗教を信仰している。…

【マリ】より

…マリ国内のマンデ諸族Mandeには,バンバラ族(166万),ソニンケ族Soninke(サラコレ族Sarakole)(42万),マリンケ族(30万),カソンケ族Khassonkeなどの農耕民や,交易に従事するデュラDyula商人が含まれる。そのほか,大西洋側語群,ボルタ語群など言語系統の異なる部族のなかで有力なのは,中部のニジェール川が形成する内陸デルタ地域に居住するフルベ(フラニ,プール)族(55万),南部に住むセヌフォ族(43万),東部のニジェール川の大湾曲部に住むソンガイ族(30万),バンディアガラ山地に住むドゴン族(24万),北部の砂漠を生活の舞台とするトゥアレグ族や,その南のサヘル地帯に住むモール族Maureなどである。 バンバラ族は人口が最大で,しかも首都のバマコの住民でもあり,国内で最も大きな勢力をもっている。…

※「ソンガイ族」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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