日本大百科全書(ニッポニカ) 「ソールズベリー大聖堂」の意味・わかりやすい解説
ソールズベリー大聖堂
そーるずべりーだいせいどう
Salisbury Cathedral
イギリス初期ゴシック様式の代表的聖堂。イングランド南部のソールズベリーにある。1220~1479年に造営され、フランスのシトー派修道院に先例をみる二重翼廊を採用しているが、アプスはフランスのゴシック式聖堂を特徴づける放射状礼拝堂群と周歩廊の組合せによる半円形ではなく、矩形(くけい)の平頭プランである。さらに内陣部は著しく深くなりアーリー・イングリッシュ式とよばれる独自のゴシック様式が達成されている。一方、聖堂の中心部に巨大な塔(123メートル)を立て、正面を双塔で囲む構成法はノルマン由来のものである。内部身廊の側面は上部の明層(あかりそう)、中間のトリフォリウム、そして積柱列の三層からなっているが、各層のアーチの曲線相互間には脈絡がなく、垂直に作用する力線に一貫性がみられない。これは、穹窿(きゅうりゅう)や支柱の力線体系を建築に不可欠の要素とみなしたフランスの建築家の方法とはまったく趣(おもむき)を異にしている。また穹窿も対角線をなすリブのほかにいくつかの小リブが追加され、星形に分岐して構造的な機能よりも装飾性が尊重されている。それに呼応して、堂内の各部が初期ゴシック様式の石彫、木彫で豊かに装われ、また司教や著名人の墓碑が随所に置かれている。1270~1310年に建立された僧院回廊は初期、後期の混合ゴシック様式を示し、これに隣接する八角形プランの参事会員室は1本の支柱で穹窿が支えられ、葉飾りの柱頭をもつ円柱と狭間飾りで内壁が豪華に構成されている。
[濱谷勝也]