タブララサ(英語表記)tabula rasa

翻訳|tabula rasa

デジタル大辞泉 「タブララサ」の意味・読み・例文・類語

タブラ‐ラサ(〈ラテン〉tabula rasa)

《何も書かれていない書板の意》ロック認識論での用語。生まれながらの人間の心には白紙のように生得観念はないという主張のたとえ。

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

精選版 日本国語大辞典 「タブララサ」の意味・読み・例文・類語

タブラ‐ラサ

  1. 〘 名詞 〙 ( [ラテン語] tabula rāsa 文字の書いてない書き板の意 ) ロックがデカルトの生得観念に反対して、人間の心は生まれたとき全白紙の状態であり、経験からの印象により知識が成立すると主張した際に用いたことば。

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報 | 凡例

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「タブララサ」の意味・わかりやすい解説

タブラ・ラサ
tabula rasa

ろうなどを引いた書字板の字を削り消して何も書き込まれていない状態にした書字板,すなわち白紙状態の意。感覚論において魂は,外部からの刺激による経験をまって初めて,観念を獲得するとされているが,その経験以前の魂の状態をいう。この立場では観念の生得性は否定され,知覚において精神は受動的に働くと考えられる。ロックの用語とされるが,古くからある概念プラトン,ストア派,特にアリストテレスに同様の考えがあり,タブラ・ラサというラテン語はアリストテレスの訳語としてローマアエギディウスが考案したとされる。その後アルベルツスマグヌストマス・アクィナスが用いて定着した。

出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報

世界大百科事典(旧版)内のタブララサの言及

【感覚】より

…他方イギリス経験論においては,感覚はあらゆる認識の究極の源泉として尊重され,その思想は〈感覚の中にあらかじめないものは知性の中にはない〉という原則に要約されている。ロックによればわれわれの心は白紙(タブラ・ラサtabula rasa)のようなものであり,そこに感覚および内省の作用によってさまざまな観念がかき込まれる。ここで感覚とは,感覚器官が外界の可感的事物から触発されることを通じて心に伝えるさまざまな情報のことである。…

【模写説】より

…デモクリトスやエピクロスは,事物から流出する微小な〈像eidōlon〉が感覚器官に入りこみ,心を刺激して知覚が生じると説き,プラトンは心は〈本〉に似ており,感覚や記憶によって受け入れられ心に書きつけられたことの〈似姿eikōn〉を,知性がもう一度心に画き直すとした。スコラ哲学以来,〈鏡〉に映じた像から実物・現物へとさかのぼる思弁が始まり,13世紀以後,心を〈やすりをかけられた板(タブラ・ラサtabula rasa)〉とみなす考えが起こる。一般に,心は鏡が事物を映すように,平らな板に字が書かれるように,蠟に印形が刻印されるように,事物を模写し模像し,この模写ないし模像が事物の認識に当たると説くのが模写説であり,常識ないし素朴実在論の認識理論に当たる。…

※「タブララサ」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

今日のキーワード

スキマバイト

働き手が自分の働きたい時間に合わせて短時間・単発の仕事に就くこと。「スポットワーク」とも呼ばれる。単発の仕事を請け負う働き方「ギグワーク」のうち、雇用契約を結んで働く形態を指す場合が多い。働き手と企...

スキマバイトの用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android