ダイカスト法(読み)ダイカストほう(その他表記)die-casting

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ダイカスト法」の意味・わかりやすい解説

ダイカスト法
ダイカストほう
die-casting

金型を用いる精密鋳造法。金型に溶湯 (溶融金属) を 100~1000 kg/cm2 の圧力で強制的に圧入鋳造する。金型のため冷却が速いので組織の細かい良質の鋳物ができ,また薄肉や複雑な形状の鋳物もつくりやすいが,反面,肉厚鋳物では冷却が不均等になるので適しない。また溶湯圧入の際,空気も同時に巻込まれやすく,空気気泡による特性が劣化する場合もあり,その対策として種々の方法が考案されている。装置は比較的簡単かつ安価で生産性は各種鋳造法中最も高いが,溶湯圧入の衝撃のため高価な金型の損傷が激しく,また比較的低融点金属材料にしか適用できないなどの長・短所がある。適用材料はアルミニウム合金マグネシウム合金亜鉛合金,スズ合金,鉛合金および銅合金などで,鉄鋳物には用いられず,また大型物にも不適である。量産に適するので中小物の自動車機械部品,カメラボディ,家具鋳物などに多く応用されている。注湯を特に高圧としない重力鋳造でも,金型で機械注湯にした場合をダイカストということがあるが,鋳造品の組織学的特徴からいえばこれは普通の金型鋳造である。ダイカスト用金型が高価なのは,材料費よりもむしろ型彫り代が高いためである。この方法は,1838年にアメリカブルース活字鋳造用に発明し,1907年に E. B.ファンワグナーが現在の原型の圧入型を始め,以来改良されて今日の技術となった。日本への導入は 25年頃である。

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化学辞典 第2版 「ダイカスト法」の解説

ダイカスト法
ダイカストホウ
pressure die casting

鋳造法の一種.機械加工によって製品の寸法と同じに製作された金型(dies)に,溶融状態の金属あるいは合金を高温で,機械圧,空気圧,または水圧加圧注入して,高精度で,かつ鋳肌(鋳物表面)の平滑な鋳物を短時間に大量に生産する鋳造方式をいう.ダイカスト法は,活字や銃弾などの鉛合金鋳造品の量産のために発明された技術であったが,鋳造用合金の発達と需要の開発によって,精密鋳造用としてこの技術が発展した.この方法は比較的融解温度の低いアルミニウム合金,マグネシウム合金,亜鉛合金などに用いられる.ダイカスト法は設備費は高いが,生産率がよく,製品の鋳肌が平滑であり,機械加工費が非常に少なくてすむことが特徴である.また製品は,簡単なものからきわめて複雑でかつ薄肉のものまでできる.しかし,製品の大きさはダイカスト機の大きさにより制限を受けるため,小物および中物の製造に適している.

出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報

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