マグネシウム合金(読み)マグネシウムごうきん(英語表記)magnesium alloys

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「マグネシウム合金」の意味・わかりやすい解説

マグネシウム合金
マグネシウムごうきん
magnesium alloy

マグネシウムアルミニウムよりさらに軽く (比重 1.74) ,その合金も軽量の機械部品,構造材料を意図してつくられた。最初のものは 1909年ドイツの G.エレクトロンの発明したエレクトロン合金 (アルミニウム5~10%,亜鉛 0.5~3.5%,マンガン少量添加の組成) である。類似の合金がアメリカではダウメタルの名で製造された。これらはアルミ系高力合金と同じく時効硬化性があり,鋳物にも圧延材にもなるが,耐食性は悪い。その後開発されたマグネシウム-亜鉛-ジルコニウム系,マグネシウム-ジルコニウム-希土類元素 (おもにセリウム) 系,マグネシウム-ジルコニウム-トリウム系など,一連のジルコニウム添加合金は高温強度や鋳造性にそれぞれ特徴はあるが,耐食性はやはり悪い。マグネシウム-マンガン系 (マンガン 1.2%,カルシウム 0.09%) は耐食性はやや改善されているが不十分である。現在最も多く実用される合金はアルミニウム 8.3~9.7%,亜鉛 0.35~1.0%,マンガン 0.15%以上のエレクトロン系合金で,ダイカスト鋳物として機械部品に用いられる。室温における引張強さは 250MPa程度である。ほかに特殊用途として,湿気中の鉄鋼構造材の極電位を陰極化して防食する流電防食法の陽極にもエレクトロン合金が使われる (→金属の腐食 ) 。マグネシウム合金はすべて耐食性が悪いので,JISではその防食処理法を細かく規定している。以上とは別に,マグネシウムの熱中性子吸収の小さいことを利用する原子炉構造用合金が注目されており,アルミニウム1%,ベリリウム,カルシウムを少量含むマグノックスがある。マグネシウムは六方晶で塑性加工性が悪いので,リチウム Liを加えて立方晶の合金をつくることが研究されている。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「マグネシウム合金」の意味・わかりやすい解説

マグネシウム合金
まぐねしうむごうきん
magnesium alloys

マグネシウムを主体とし、それに他元素を加えた合金。マグネシウムは実用金属中もっとも軽い(比重1.74)ので、これに少量の添加元素を加えて強化した合金が、軽量の構造材料として航空機・宇宙探査機部品、自動車部品、その他高速回転部品、携帯用品などに多量に用いられている。銅合金アルミニウム合金に比較すれば、その強度はあまり高くはないが、比強度(強さ/比重)で比較すれば、マグネシウム合金は高張力鋼に相当する。マグネシウム合金は鋳造、温間加工、溶接などは容易で、仕上がりが美しいという特徴がある。アルミニウムを添加すると熱処理性が現れ、強さ、硬さを増す。亜鉛は鋳造性を向上させるとともに強さや破断までの伸びを向上させる。これら添加元素を含む合金は、熱処理により純マグネシウムの2~3倍の強さとなる。マグネシウム合金は高温では使用できないが、温間での強度低下を防ぐ目的でジルコニウム、トリウム、セリウムなどを加えることがある。実用マグネシウム合金には、耐食性向上のために微量のマンガンを加えているのが普通である。

[及川 洪]

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