改訂新版 世界大百科事典 「チャバネゴキブリ」の意味・わかりやすい解説
チャバネゴキブリ
Blattella germanica
ゴキブリ目チャバネゴキブリ科の昆虫。淡褐色,小型のゴキブリで,成虫は雄は体長12mm,雌は11mm。雄の前翅長は10mm,雄は11mm。前胸背面の1対の黒紋は〈ハ〉の字状に並んでいるが,その後端で著しく接近することはない(日本の野生種である近似のモリチャバネゴキブリでは後方で接近する)。世界の温帯の家屋内害虫となって定着し,今日では原産地を確実には推定できない。ただし低温にはきわめて弱いのでおそらく世界の暖帯由来の種であろう。日本にはたぶん江戸時代末期ころに外国船によって運ばれたものであろう。雌は腹端に卵鞘(らんしよう)を保持して走り回っているが,常温で約20~30日の後にこれが裂けて25~55匹くらいの幼虫がいっせいに孵化(ふか)する。幼虫は人家内のあらゆる有機物を食害して,2~3ヵ月の間に約7~9回の脱皮を経て成虫となる(個別に飼育すると,この期間が著しくのび脱皮回数も増える)。成虫の寿命は50~80日くらい。他種の害虫ゴキブリと同様に各種の病原微生物を保有媒介することが知られている。
→ゴキブリ
執筆者:朝比奈 正二郎
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報