チャン・フンダオ(読み)ちゃんふんだお(英語表記)Trân Hu'ng Dao

日本大百科全書(ニッポニカ) 「チャン・フンダオ」の意味・わかりやすい解説

チャン・フンダオ
ちゃんふんだお / 陳興道
Trân Hu'ng Dao
(1232―1300)

13世紀ベトナムで、モンゴル軍の侵略を破った民族英雄。本名チャン・クォクトゥアン(陳国峻)。クォクトゥアンはベトナム陳朝の王族の子に生まれ、興道(フンダオ)王に封ぜられた。チャン・フンダオの名はこれに始まる。

 1283年、元(げん)のフビライ・ハンのベトナム侵寇(しんこう)を目前にして、陳の仁宗はフンダオを国公に任じ、天下の諸軍を統率させた。翌年フンダオが書いた『檄(げき)将士文』はベトナム古典中の名文として知られる。85年春、元軍が迫ると、フンダオは帝を擁してソンコイ川(紅河)を下り、中部のタインホアに落ちた。このとき、降伏しようとする帝に、まず臣の首を断てといさめた話は名高い。山地よりハノイ迂回(うかい)したフンダオの軍は5月にはソンコイ川デルタ一帯で元軍を破り、逃げる元軍を追撃して大勝利を収めた。

 87年、再度侵寇した元軍はたちまちソンコイ川デルタ一帯を占領したが、ベトナム側の焼土作戦にあって糧食に窮し、ふたたび撤退に追い込まれた。この撤退の際、元軍の水軍がバクダンザン(白藤江)で干潮時に打ち込まれた杭(くい)にかかって大敗した話もよく知られる。フンダオは現在、民族英雄として高く評価されるとともに、霊神としても尊崇される。

[桜井由躬雄]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

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