霊験のあらたかな神,ご利益(りやく)の著しい神をいう。古典の上では,《保元物語》の巻上〈将軍塚鳴動幷びに彗星出づる事〉の段に,石清水(いわしみず)八幡宮,賀茂神社,日吉大社,北野天満宮,松尾大社,平野神社,伏見稲荷,八坂神社,住吉大社,春日大社,広田神社,広瀬神社,大原野神社などの畿内の神々が,日夜,禁中を守護されていることを述べた条で,たとえ逆臣が反乱をおこしても,これらの霊神が必ずお助け下さるとある。また,《平家物語》の巻一〈内裏炎上〉の段の,日吉の神輿が洛内に入ったことを述べた条では,もしも霊神がお怒りになったならば災害が頻発するであろうとあり,同じく巻七〈願書〉の段では,願わくは霊神が力を合わせて勝敗を一時に決し,怨を四方へ退かせ給えとある。《太平記》巻二十の〈越後勢越前を越える事〉の段にも,霊神の怒りの威力が述べられている。
いずれの例も,窮地に陥った際の人々の切実な願いに対して,超自然的・神秘的な力によって著しい験(しるし)を与える神が霊神とみられており,人々が人知をもってはいかんともしがたいような行きづまりを解決する方法は,超自然的な存在によってもたらされると期待してきたことを示すものである。なお,〈〇〇霊神〉と称するのは,家の父祖を神としてまつるときに卜部(うらべ)家に願い出て授与された祀号の一つであり,吉川神道,垂加神道にも受け継がれた。
執筆者:大井 鋼悦
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
…〈尋常ならずすぐれたる徳のありて,可畏き物を迦微(かみ)とは云なり〉という本居宣長の考え方によれば,人間でも優れた資質があれば,神にまつられることになる。人を神にまつると,吉田神道では,これに霊神(れいじん)号を与えた。その生祠を霊社(れいしや)と称している。…
※「霊神」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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