チュツオーラ(読み)ちゅつおーら(英語表記)Amos Tutuola

日本大百科全書(ニッポニカ) 「チュツオーラ」の意味・わかりやすい解説

チュツオーラ
ちゅつおーら
Amos Tutuola
(1920―1997)

ナイジェリアヨルバ・ランド出身の小説家。父親はココア園で働く農民。彼自身は、子供のころ薪(たきぎ)拾いに森林をさまよい、夕暮れ古老の話す昔話に耳を傾けるのが好きだったという。1939年、父の死で高等学校を中退後、ラゴスで習得した鍛冶(かじ)職の技術でイギリス空軍部隊に勤務し、ビルマ(現ミャンマー)戦線従軍。復員後労働局に勤め、使い走りのかたわら書きためた草稿が、1952年に名作『やし酒飲み』となって出版された。56年にナイジェリア国営放送イバダン支局に奉職し、ムバリ作家芸術家クラブの設立委員となり、76年の退職後は家電製品の販売業を営み、79年にイフエ大学から客員作家として招かれた。幽鬼のさまようアフリカのジャングルで、やし酒飲みが遭遇する霊異の世界を描いた『やし酒飲み』は、怪奇幻想小説として日本でも評判をよび、仮面喜劇に脚色されて「アトムの会」のメンバーで上演された。ほかに『神々の森放浪記』(1954)、『勇敢なアフリカの女狩人』(1958)、『ジャングルの羽根女』(1962)、『アジャイイと貧困相続』(1967)など、神話民間伝承に取材したジャングル放浪ものが多く、81年には14年ぶりに妻を懐妊させる妙薬を求めてジャングルを冒険する狩人の物語『薬草まじない』を出版した。その後の作品に、小説『幽鬼の森の野生の狩人』(1982)、『貧困者・がなり家・中傷家』(1987)、民話集『ヨルバの民話』(1986)、短編集『村の呪術(じゅじゅつ)医師』(1990)がある。なお、晩年には幻想的な作風でマジカル・リアリズムの先達として国際的な評価が高まり、またアフリカ伝統文化発掘紹介の先覚者としても若い世代の敬愛を受けた。

土屋 哲]

『土屋哲訳『薬草まじない』(1983・晶文社)』『土屋哲訳『やし酒飲み』(1970、1998・晶文社クラシックス)』

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チュツオーラ

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