日本大百科全書(ニッポニカ) 「ヨルバ」の意味・わかりやすい解説
ヨルバ
よるば
Yoruba
アフリカ、ナイジェリア南西部からベナン共和国、トーゴ北部にかけての地域に居住するネグロイド系民族。推定人口約1500万。ヨルバ語を話す。ヤム、キャッサバ、メイズなどを主作物とする農耕民であるが、古くから交易活動をよくし、タカラガイを貨幣として用いていた。伝統的に大規模な都市的集落を形成し、人口の大部分がそこに居住するという生活様式のために、アフリカでも特異な都市居住民として知られてきた。ヨルバ全体が政治的に統一されたことはなく、イフェ、オヨ、イジェシャ、イジェブ、オンド、エキティ、エグバなど13世紀から14世紀にかけて成立したとみられる多数の王国からなる。それらの王国の王はすべて、一人の神話的始祖オドゥドゥワの子孫とされるが、政治組織の構成は、王国ごとに大きく異なる。親族組織についても、北部が父系の地域集団を形成するのに対して、南部は双系的な傾向を示すという相違がみられる。伝統的宗教は、職能神や自然が神格化された人格神に対する祭祀(さいし)を中核とする多神教であるが、今日では大多数がキリスト教やイスラム教に改宗している。
20世紀初頭に、古都イフェで発見されたブロンズ製の人像は、13世紀ころの作と推定されているが、その写実的な作風と完成度の高さは、ヨルバ文化の質の高さを世界に知らしめた。『やし酒飲み』(1998・晶文社)で知られる異色の作家エイモス・トゥトゥオラAmaos Tutuola(慣習的にチュツオーラと表記されることがあるがこれは誤りで、トゥトゥオラが正しい)や、1984年(昭和59)に来日した、アフリカ現代音楽の旗手キング・サニー・アデ、1986年ノーベル文学賞を受賞したウォレ・ショインカもヨルバである。
[渡部重行]
『P・C・ロイド著、高部義信訳『ヨルバ族』(『世界の民族 二 熱帯アフリカ』所収・1978・平凡社)』▽『山口昌男著『アフリカの神話的世界』(岩波新書)』