新幹線設備の適切な継続管理のための検査車両。正式名称は新幹線電気軌道総合試験車。車体全面が警戒色の黄色に着色されていることから、ドクターイエローの愛称でよばれる。東海道新幹線と山陽新幹線の区間を、実際の営業列車とほぼ同じ条件でおよそ10日ごとに走らせ、動的な状態における電気関係や軌道関係の設備の異常や不正を調べ、乗り心地の状態などを確認する。おもな検査項目は、電気関係では(1)トロリ線(パンタグラフを通じて電車へ電力を供給する電線)、(2)架線電圧、電流、(3)信号、(4)通信(列車無線雑音や電界強度ほか)などの異常で、それぞれの電線の摩耗や腐食などを点検する。軌道関係では、(1)軌間(左右レール間の距離)、(2)左右のレールの高低、(3)通り(水平方向のずれ)、(4)左右のレールの平面性、(5)列車の動揺などの箇所に関し、軌道の変位によって生じるさまざまな狂いを検測する。
試験車による検査は、電気関係と軌道関係でそれぞれ別の専用試験車両が用いられるのが一般的で、東海道新幹線も開通当初の1964年(昭和39)に導入されていた試験車は、軌道用と電気用が分かれていた。これらの試験車は車体が黄色で、ドクターイエローの初代である。その後、1編成で電気と軌道両方の検査ができるT2編成(922-10号車)が投入される。これは山陽新幹線博多駅開業を翌年に控えた1974年のことで、検測距離の延伸にあわせ、保守の効率をあげるために導入された。2014年(平成26)時点では、2001年に導入された700系の営業列車と同等の時速270キロメートル走行に対応したT4編成が運用されており、JR西日本の区間では同等のT5編成が稼働している。また、東北新幹線と上越新幹線および山形・秋田・北陸(長野)新幹線においても開業時からドクターイエローが試験車として運行されてきたが、2003年にミニ新幹線区間を含むJR東日本の新幹線全区間に対応でき、時速275キロメートルで検測ができる白い車体のE926電気軌道総合試験車East-i(イーストアイ)と入れ替わった。
2014年7月には東海道新幹線の開業50周年を記念し、現行T4編成のドクターイエロー内部が初めて一般に公開された。ドクターイエローは走行回数が少なく、そのスケジュールが公開されていないため、珍しい車両として鉄道ファンに人気がある。
[編集部]
(2014-7-29)
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