チロシンキナーゼ阻害剤(読み)チロシンキナーゼソガイザイ

病院でもらった薬がわかる 薬の手引き 電子改訂版 「チロシンキナーゼ阻害剤」の解説

チロシンキナーゼ阻害剤

製品名
《アファチニブマレイン酸塩製剤》
ジオトリフ(日本ベーリンガーインゲルハイム)
《アレクチニブ塩酸塩製剤》
アレセンサ(中外製薬)
《イブルチニブ製剤》
イムブルピカ(ヤンセンファーマ)
《イマチニブメシル酸塩製剤》
イマチニブ(エルメッド、エーザイ、大原薬品工業、共創未来ファーマ、共和クリティケア、小林化工、沢井製薬、第一三共エスファ、第一三共、高田製薬、武田テバファーマ、武田薬品工業、辰巳化学、東和薬品、日医工、日本ケミファ、ニプロ、日本化薬、日本新薬、日本ジェネリック、ファイザー、マイラン製薬、、ヤクルト本社)
グリベック(ノバルティスファーマ)
《エルロチニブ塩酸塩製剤》
タルセバ(中外製薬)
《オシメルチニブメシル酸塩製剤》
タグリッソ(アストラゼネカ)
《クリゾチニブ製剤》
ザーコリ(ファイザー、メルクセローノ)
《ゲフィチニブ製剤》
イレッサ(アストラゼネカ)
《ダコミチニブ水和物製剤》
ビジンプロ(ファイザー)
《ダサチニブ水和物製剤》
スプリセル(ブリストル・マイヤーズスクイブ)
《ニロチニブ塩酸塩水和物製剤》
タシグナ(ノバルティスファーマ)
《ボスチニブ水和物製剤》
ボシュリフ(ファイザー)
《ポナチニブ塩酸塩製剤》
アイクルシグ(大塚製薬)
《ラパチニブトシル酸塩水和物製剤》
タイケルブ(ノバルティスファーマ)
《ルキソリチニブリン酸塩製剤》
ジャカビ(ノバルティスファーマ)
《ロルラチニブ製剤》
ローブレナ(ファイザー)

 チロシンキナーゼは、細胞の分化、増殖などのシグナル伝達に重要な役割を果たしますが、欠損変異を生じた場合には多くのガン疾患に関係します。チロシンキナーゼには上皮成長因子受容体EGFR)、ヒト上皮増殖因子受容体2型(HER2)、Bcr-Ablなど、多くの種類がありますが、そのうちのひとつ、または複数を標的とし、そのはたらきを阻害することによって、特定の腫瘍細胞(ガン細胞)の増殖を抑制します。


 アファチニブマレイン酸塩製剤は、上皮成長因子受容体(EGFR)遺伝子変異陽性の手術不能または再発非小細胞肺ガンに用いれらます。


 アレクチニブ塩酸塩製剤は、未分化リンパ腫キナーゼ(ALK)融合遺伝子陽性の切除不能な進行・再発の非小細胞肺ガンに用いられます。


 イブルチニブ製剤は、再発または難治性の慢性リンパ性白血病(小リンパ球性リンパ腫を含む)再発または難治性のマントル細胞リンパ腫に用いられます。


 イマチニブメシル酸塩製剤は、慢性骨髄性こつずいせい白血病フィラデルフィア染色体陽性急性リンパ性白血病KIT陽性消化管間質腫瘍好酸球増多症候群慢性好酸球性白血病の治療に用いる薬です。


 エルロチニブ塩酸塩製剤はEGFRの細胞内の部分を標的とし、ガン細胞の増殖指令の伝達を抑制します。化学療法施行後に悪化した切除不能な再発・進行性非小細胞肺ガン、EGFR遺伝子変異陽性の切除不能な再発・進行性で、化学療法未治療の非小細胞肺ガンに用います。


 オシメルチニブメシル酸塩製剤は、EGFRチロシンキナーゼ阻害薬に抵抗性のEGFRT790M変異陽性手術不能または再発非小細胞肺ガンに用いられます。


 クリゾチニブ製剤はALK融合遺伝子及びROS1融合遺伝子の蛋白たんぱく質のはたらきを抑制します。ALK融合遺伝子陽性の切除不能な再発・進行性非小細胞肺ガン、ROS1融合遺伝子陽性の切除不能な再発・進行性非小細胞肺ガンに用いられます。


 ゲフィチニブ製剤はEGFR遺伝子変異陽性の手術ができないまたは再発または進行性小細胞肺ガンの治療に用いられます。


 セリチニブ製剤はALK融合遺伝子陽性の切除不能な進行・再発の非小細胞肺ガンに用いられます。


 ダコミチニブ水和物製剤は、上皮成長因子受容体(EGFR)遺伝子変異陽性の手術不能または再発非小細胞肺ガンに用いれらます。


 ダサチニブ水和物製剤は、Bcr-Ablなど複数のチロシンキナーゼを阻害します。慢性骨髄性白血病及び再発または難治性のフィラデルフィア染色体陽性急性リンパ性白血病に用います。


 ニロチニブ塩酸塩水和物製剤は、Bcr-Abl蛋白を標的とし、この白血病細胞の産生を抑制します。慢性期または移行期の慢性骨髄性白血病に用います。


 ボスチニブ水和物製剤は、これまで使用した治療薬に抵抗性または不耐容の慢性骨髄性白血病に用いられます。


 ポナチニブ塩酸塩製剤は、これまで使用した治療薬に抵抗性または不耐容の慢性骨髄性白血病、再発または難治性のフィラデルフィア染色体陽性急性リンパ性白血病に用いられます。


 ラパチニブトシル酸塩水和物製剤は、EGFR及びHER2蛋白を標的とします。HER2過剰発現が確認された手術不能または再発乳ガンに用います。


 ルキソリチニブリン酸塩製剤は、骨髄線維症、今までの治療で効果が出なかった真性多血症に用いられます。


 ロルラチニブ製剤は、アレクチニブン酸塩製剤やクリゾチニブ製剤、セリチニブ製剤に耐性があるALK融合遺伝子に陽性の切除不能な進行・再発の非小細胞肺ガンに用いられます。


 発疹ほっしん、かゆみなどの過敏症状が現れた場合には服用を止め、すぐ医師に報告してください。


 アファチニブマレイン酸塩製剤は、間質性肺疾患、重度の下痢・皮膚障害、肝不全、肝機能障害、心障害、中毒性表皮壊死融解症、皮膚粘膜眼症候群、多形紅斑、消化管潰瘍・出血、急性膵炎がおこることがあります。


 アレクチニブ塩酸塩製剤は、間質性肺疾患、肝機能障害、好中球・白血球減少、消化管穿孔、血栓塞栓症がおこることがあります。


 イブルチニブ製剤は、出血、白血球症、感染症、進行性多巣性白質脳症、骨髄抑制、不整脈、腫瘍崩壊症候群、過敏症、皮膚粘膜眼症候群、肝不全、肝機能障害、間質性肺疾患がおこることがあります。


 イマチニブメシル酸塩製剤では、骨髄抑制、出血、消化管出血、胃前庭部毛細血管拡張症、消化管穿孔、腫瘍出血、肝機能障害・黄疸おうだん・肝不全、重い体液貯留(胸水、腹水、肺水腫など)、肺炎、敗血症、重い腎障害、間質性肺炎、肺線維症、中毒性表皮壊死えし融解症、皮膚粘膜眼症候群、多形紅斑こうはん、剥脱性皮膚炎、心膜炎、脳浮腫、頭蓋内圧上昇、血栓症・塞栓症、ショック、アナフィラキシー、肺線維症、麻痺性イレウス、横紋筋融解症、腫瘍崩壊症候群、肺高血圧症などがおこることがあります。


 エルロチニブ塩酸塩製剤では、間質性肺疾患(間質性肺炎、肺臓炎、放射線性肺臓炎、器質化肺炎、肺線維症、急性呼吸窮迫症候群、肺浸潤、胞隔炎)、肝炎、肝不全、肝機能障害、重度の下痢、急性腎障害、重度の皮膚障害、皮膚粘膜眼症候群、中毒性表皮壊死融解症、多形紅斑、消化管穿孔、消化管潰瘍、角膜穿孔、角膜潰瘍などがおこることがあります。


 オシメルチニブメシル酸塩製剤は、間質性肺疾患、QT間隔延長、血小板・好中球・白血球減少、貧血、肝機能障害がおこることがあります。


 クリゾチニブ製剤では間質性肺疾患、劇症肝炎、肝不全、肝機能障害、QT間隔延長、徐脈、血液障害、心不全などが現れることがあります。


 ゲフィチニブ製剤では急性肺障害、間質性肺炎、重度の下痢、脱水、皮膚粘膜眼症候群、中毒性表皮壊死えし融解症、多形紅斑こうはん、肝炎、肝機能障害、黄疸おうだん、肝不全、血尿、出血性膀胱炎、急性膵炎すいえん、消化管穿孔、消化管潰瘍、消化管出血などが現れることがあります。


 セリチニブ製剤は、間質性肺疾患、肝機能障害、QT間隔延長、徐脈、重度の下痢、高血糖、糖尿病、膵炎がおこることがあります。


 ダコミチニブ水和物製剤は、間質性肺疾患、重い下痢、重度の皮膚障害、肝機能障害が現れることがあります。


 ダサチニブ水和物製剤では、骨髄抑制、出血、体液貯留、感染症、間質性肺疾患、腫瘍崩壊症候群、心電図QT延長、心不全、心筋梗塞、急性腎障害、肺動脈性肺高血圧症が現れることがあります。


 ニロチニブ塩酸塩水和物製剤では、白血球・好中球・汎血球・血小板減少、貧血、QT間隔延長、心筋梗塞、狭心症、心不全、末梢動脈閉塞性疾患、脳梗塞、一過性脳虚血発作、高血糖、心膜炎、出血、肺炎、敗血症、肝炎、肝機能障害、黄疸、膵炎、胸水、肺水腫、心嚢液貯留、うっ血性心不全、心タンポナーデ、間質性肺疾患、脳浮腫、消化管穿孔、腫瘍崩壊症候群が現れることがあります。


 ボスチニブ水和物製剤は、肝炎、肝機能障害、重度の下痢、骨髄抑制、体液貯留、ショック、アナフィラキシー、心障害、感染症、出血、膵炎、間質性肺疾患、腎障害、肺高血圧症、腫瘍崩壊症候群、中毒性表皮壊死融解症、皮膚粘膜眼症候群、多形紅斑がおこることがあります。


 ポナチニブ塩酸塩製剤は、冠動脈疾患、脳血管障害、末梢動脈閉塞性疾患、静脈血栓塞栓症、骨髄抑制、高血圧、肝機能障害、膵炎、体液貯留、感染症、重度の皮膚障害、出血、心不全、うっ血性心不全、不整脈、腫瘍崩壊症候群、ニューロパチー、肺高血圧症がおこることがあります。


 ラパチニブトシル酸塩水和物製剤では、肝機能障害、間質性肺疾患、心障害、下痢、QT間隔延長、重度の皮膚障害が現れることがあります。


 ルキソリチニブリン酸塩製剤は、骨髄抑制、感染症、進行性多巣性白質脳症、出血、間質性肺疾患、肝機能障害、心不全がおこることがあります。


 ロルラチニブ製剤は、間質性肺疾患、QT間隔延長、中枢神経系障害(認知障害、言語障害など)、膵炎、肝機能障害がおこることがあります。


 このような症状が現れたときには使用を止め、すぐ医師に報告してください。


 そのほかに、吐き気、視力障害、下痢、嘔吐、便秘、末梢性浮腫、脱毛などが現れることがあります。


 このような症状が現れたら、医師に相談してください。


①使用開始にあたり、医師から副作用や注意事項などの説明があります。説明をよく理解したうえで、使用してください。服用方法については医師・薬剤師の指示を守ってください。


 アファチニブマレイン酸塩製剤は、錠剤で1日1回、空腹時に服用します。1回の使用量などは医師・薬剤師の指示を守り、正しく使用しましょう。間質性肺疾患またはその病歴がある人、重度の肝・腎機能障害、心不全症状またはその病歴がある人、左心室駆出率低下がある人、ほかの薬を使用している人は、医師に相談してから用いてください。


 アレクチニブ塩酸塩製剤は、カプセルで1日2回服用します。1回の使用量などは医師・薬剤師の指示を守り、正しく使用しましょう。妊娠中や妊娠している可能性のある人には使用できません。また、ほかの薬を使用している人は、医師に相談してから用いてください。


 イブルチニブ製剤は、カプセルで1日1回服用します。1回の使用量などは医師・薬剤師の指示を守り、正しく使用しましょう。中等度以上の肝機能障害、妊娠中や妊娠の可能性のある人には使用できません。また、ケトコナゾール、イトラコナゾール、クラリスロマイシンを使用している人は使用できません。ほかに薬を使用している人は医師に報告してください。


イマチニブメシル酸塩製剤は錠剤で、1日1回、食後に内服します。1回の使用量などは医師・薬剤師の指示を守り、正しく使用しましょう。肝障害のある人、高齢者、心疾患のある人やその既往歴のある人、ほかの薬を使用している人は、医師に相談してから用いてください。


 エルロチニブ塩酸塩製剤は錠剤で、1日1回食事の1時間以上前または食後2時間以降に服用します。間質性肺疾患またはその既往歴、肝機能障害、消化管潰瘍や腸管憩室またはその既往歴のある人は、必ず医師に相談してから用いてください。


 オシメルチニブメシル酸塩製剤は、錠剤で1日1回の服用です。1回の使用量などは医師・薬剤師の指示を守り、正しく使用しましょう。妊娠中や妊娠の可能性のある人には使用できません。また、ほかの薬を使用している人は、医師に相談してから用いてください。


 クリゾチニブ製剤はカプセル剤で、1日2回服用します。間質性肺疾患またはその既往歴、肝機能障害、心電図の異常またはその既往歴、重度の腎機能障害のある人は必ず医師に報告してください。また視力障害が現れることがあるので、自動車の運転や高所作業などは注意してください。


 ゲフィチニブ製剤は錠剤で、1日1回服用します。急性肺障害、特発性肺線維症、間質性肺炎、じん肺症、放射線肺炎、薬剤性肺炎またはこれらの既往歴のある人、全身状態の悪い人、肝機能障害のある人は、必ず医師に報告してください。


 セリチニブ製剤は、カプセル剤で1日1回、空腹時に服用します。1回の使用量などは医師・薬剤師の指示を守り、正しく使用しましょう。間質性肺疾患またはその病歴がある人、重度の肝機能障害、QT間隔延長のおそれやその病歴、ほかの薬を使用している人は、医師に相談してから用いてください。


 ダコミチニブ水和物製剤は、錠剤で1日1回服用します。1回の使用量などは医師・薬剤師の指示を守り、正しく使用しましょう。間質性肺疾患またはその既往歴、肝機能障害のある人は必ず医師に報告してください。


 ダサチニブ水和物製剤は錠剤で、慢性期に1日1回、移行期または急性期及び再発または難治性のフィラデルフィア染色体陽性急性リンパ性白血病に1日2回服用します。ほかにイマチニブに忍容性のない慢性骨髄性白血病の人、QT間隔延長のおそれやその病歴のある人、血小板機能を抑制する薬あるいは抗凝固剤を使用中の人は、医師に相談してから用いてください。


 ニロチニブ塩酸塩水和物製剤はカプセル剤で、食事の1時間以上前または食後2時間以降に1日2回(小児は体表面積に合わせて1回約230mg/m2)服用します。妊婦・妊娠している可能性のある人には使用できません。心疾患またはその既往歴、QT延長のおそれまたはその病歴、肝機能障害、膵炎またはその既往歴のある人及びイマチニブに忍容性のない人などは、医師に相談してから用いてください。また視力障害が現れることがあるので、自動車の運転や高所作業はしないでください。


 ボスチニブ水和物製剤は、錠剤で1日1回食後に服用します。妊婦・妊娠の可能性のある人には使用できません。また視力障害が現れることがあるので、自動車の運転や高所作業はしないでください。


 ポナチニブ塩酸塩製剤は、錠剤で1日1回服用します。妊婦・妊娠の可能性のある人には使用できません。心筋梗塞、末梢動脈閉塞性疾患などの虚血性疾患や心血管系疾患の危険因子のある人は、医師に相談してから用いてください。また、使用中には定期的に肝機能検査を指示されることがあります。


 ラパチニブトシル酸塩水和物製剤は、錠剤で1日1回、食事の1時間以上前または食後の1時間以上後に服用します。肝機能障害、間質性肺疾患、心不全症状のある人、左心室駆出率低下の人、高齢者は、医師に相談してから用いてください。


 ルキソリチニブリン酸塩製剤は、錠剤で1日2回服用します。妊婦・妊娠の可能性のある人には使用できません。また、感染症に注意して使用します。


 ロルラチニブ製剤は、錠剤で1日1回服用します。リファンピシンを使用中の人には、使用できません。


②これらの薬の成分に過敏症の既往歴のある人は使用できません。


 妊婦、現在妊娠する可能性のある人、母乳で授乳中の人は使用できないことがありますので、必ず医師に報告してください。


 薬によっては、アゾール系抗真菌剤、マクロライド系抗生剤、グレープフルーツジュースなどと併用すると副作用が現れやすくなったり、H2受容体拮抗剤、バルビツール酸系催眠鎮静剤、リファンピシン、カルバマゼピン、セイヨウオトギリソウなどと併用すると薬の効果が減弱したりすることがあります。ほかの薬を使用中の人は、その旨を必ず医師に報告してください。

出典 病院でもらった薬がわかる 薬の手引き 電子改訂版病院でもらった薬がわかる 薬の手引き 電子改訂版について 情報

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