インターネットなどの情報通信技術(ICT:Information and Communication Technology)を活用した、場所や時間にとらわれない柔軟な働き方。会社に行かずに、自宅や近くにある会社の拠点などで仕事をすることを指す。英語の「tele(離れた)」と「work(仕事)」と合わせた造語で、テレコミューティング(Telecommuting)ともいう。働き手の仕事と生活の調和(ワーク・ライフ・バランス)の実現や、少子高齢化による労働力不足解消などを解決する方法として、近年、注目を集めている。
テレワークの形態には、自宅で会社の仕事をする在宅勤務や、移動の合間に電車や飲食店などから情報をやり取りするモバイルワーク、勤務先以外のサテライトオフィスなどで就業する施設利用型勤務、個人事業主が自宅などの小規模なオフィスで働くSOHO(ソーホー)などがある。
働き手にとっては、自宅や近くのサテライトオフィスなどを利用するため、通勤時間を減らして効率よく働けることや、勤務先と離れた地方などでの就業機会の増加、子育てや介護をしながら勤務できる、といったメリットがあると言われている。企業側にとっても、従業員が効率よく、集中して働くことで生産性の向上につながる、災害時の事業継続が可能になる、ことなどが期待されるが、従業員の勤務状態の把握や業績の評価が難しい、情報漏えいのリスクが高まるといった課題がある。
日本テレワーク協会の資料などによると、テレワークは、1970年代、自動車通勤による大気汚染の緩和などを目的に、米ロサンゼルスで始まったと言われる。その後はパソコンの普及や女性の社会進出などを背景に、欧米で定着していった。日本では、90年代初めから取り入れられ、ノートパソコンやインターネットの高速回線普及などにより、急速に広まった。しかし、総務省の資料によると、2016年時点で、国内でテレワークを導入したり、試したりしたことのある企業は13.3%にとどまっている。
政府は、個人個人の状況に合った生産性の高い働き方を実現するとともに、企業の東京への一極集中を防ぎ、交通混雑を緩和する手法として、テレワークを推進している。総務省は、17年から、3年後の東京五輪で開会式が行われる7月24日を、会社に出勤せずに自宅などで働く「テレワーク・デイ」とした。12年のロンドン五輪では、ロンドン市内の約8割の企業が英国政府の呼びかけに応じてテレワークを採用した。初のテレワーク・デイとなった17年7月24日は、政府や東京都、民間企業など927社・団体の約6万人がテレワークを行った。