デジタル大辞泉 「ディオゲネス」の意味・読み・例文・類語
ディオゲネス(Diogenēs ho Sinōpeus)
[補説]日光浴中のディオゲネスにアレクサンドロス大王が「望みはないか」とたずねたところ、「そこに立たれると日陰になるのでどいてほしい」と答えたという。
ギリシアの哲学者。キュニコス(犬儒)学派の代表的人物で,いわゆる〈樽のディオゲネス〉として知られる。若いころ黒海沿岸のシノペSinōpēで贋金作りをしており,発覚してアテナイに亡命したが,その後も精神的な意味での贋金作り,つまり公認の価値と異なった価値の創造を行ったといわれている。アンティステネスの学統を受け継ぎ,いっさいの物質的虚飾を排し,最小限の生活必需品だけで生きる自然状態こそ,人間にとって最高の幸福だとした。衣服をつけず,靴もはかず,野犬のように街頭に寝泊りし,樽を棲家とし,公衆の面前で女性と交わったという。〈恥をなくすこと(アナイデイアanaideia)〉によって,あらゆる因襲,権威から解放されること,これが魂の〈自足(アウタルケイアautarkeia)〉を目ざす彼の哲学的実践であった。その弟子テーバイのクラテスKratēsは師説を広め,〈無所有〉こそ,いっさいの苦しみ,葛藤から逃れる秘訣とし,後のストア学派の前触れとなった。
執筆者:大沼 忠弘
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古代ギリシアの哲学者。黒海沿岸の町シノペに生まれる。偽金鋳造のかどで故郷を追われアテネに住み、アンティステネスに師事したと伝えられる。多くの著作が彼に帰せられているが、真偽のほどは疑わしい。幸福とは人間の自然な欲求をもっとも容易な方法で満足させることである、自然なものは恥ずかしくも見苦しくもないから公にすべきである。この原理に反する慣習は自然に反するものであって従うべきではない、などと説き、これに倣って、自らも貧乏と無恥に支えられた自足の生活を送った。このため、「犬」とあだ名され、その一派はキニコス(犬の)学派とよばれるに至った。日光浴をしていたとき、アレクサンドロス大王がやってきてそばに立ち、「望みがあれば申し出よ」とことばをかけたところ、「わたしの日陰になってくれるな」と答えたという話は有名である。
[鈴木幹也 2015年1月20日]
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前400頃~前325頃
黒海沿岸シノペの人。大樽(おおだる)を住居とするなどかずかずの奇行をもって知られるキュニコス派の代表的哲学者。コリントでアレクサンドロス大王に望みを聞かれ,「日を遮らないでほしい」と答えたと伝えられる。
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…ナイルの水源について古代エジプト人は知識をもっていなかった。後1世紀のギリシアの船乗りディオゲネスは,東アフリカ海岸から内陸部にはいり,ナイル川の水源が二つの湖であるとの情報をもたらした最初の人である。2世紀のアレクサンドリアの地理学者プトレマイオスはナイル水系図に二つの大湖を描いた。…
… 社会的には自己の生活圏が世界的規模にまで拡大した場合,または各種の社会集団の激しい対立により,平和状態が強く希求されるような場合に出現する。思想史的にみると,古代ギリシアでは前4世紀にキュニコス派のディオゲネス(シノペの)やその一派がみずからをコスモポリテスと称して,せまい都市国家的な社会的風習を退け,超国家的・個人主義的な生活意識や思想をもったことに始まる。だがコスモポリタニズムが本格的に現れたのは,都市国家崩壊後のローマ帝国の成立により,ローマ的平和,世界国家の概念がつちかわれた後である。…
※「ディオゲネス」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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