日本大百科全書(ニッポニカ) 「アンティステネス」の意味・わかりやすい解説
アンティステネス
あんてぃすてねす
Antisthenēs
(前445?―前365?)
古代ギリシアの禁欲主義の哲学者。ソクラテスの弟子で、師の質実剛健な実践面を賛美し、これを継承した。アテネのキノサルゲスで教え、キニコス学派の祖といわれている。「快楽よりはむしろ狂気を」ということばが有名。しかし、労苦によって獲得される快楽は否定しない。「富は心のなかにあり」として、無欲にして自ら足れることを徳とした。神話のヘラクレスが彼の理想像であった。彼はまた「aはaとしかいえない」と主張して、ものの定義を認めず、虚偽や反論の可能性をも否定する結果になったといわれる。
[田中享英 2015年1月20日]
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