デメーテル(その他表記)Dēmētēr

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「デメーテル」の意味・わかりやすい解説

デメーテル
Dēmētēr

ギリシア神話の女神。農作物を産出する大地を母として神格化した地母神で,農耕の保護者。クロノスとレアの子で,兄弟のゼウスと交わり,ペルセフォネを産んだが,この愛娘ハデスにさらわれ,そのことを怒って神界を離れて人間界を放浪し,最後にはアッチカエレウシスに来て,ケレオス王と妃メタネイラらの歓待を受け,メタネイラから赤子のデモフォンの養育を委託された。デモフォンを不死にしてやろうと,夜間火の中で可死の部分を燃やしているところをメタネイラにのぞき見されて失敗,今度は自分の正体を明かして,ケレオスに神殿を建設させ,そこにこもった。デメーテルの怒りの結果,大地が不毛に陥ったのに困却したゼウスが,ハデスに働きかけ,ペルセフォネが1年の一部は上界に戻り母と一緒に暮せるという妥協を成立させると,ようやく神界への復帰を承諾したが,その前にケレオスの王子トリプトレモスに麦の種と空を飛行する車を与えて,世界に農業を広めて回らせ,また自分とペルセフォネを主神とし,それにあずかる者には死後の幸福が保証される密儀を創設した。これが名高いエレウシスの密儀の由来であるという。

デメーテル[クニドス]
Dēmētēr; Demeter of Cnidus

ギリシア彫刻。 1858年小アジア西南端クリオ岬にあった古代ギリシア植民市クニドスの神域から発見された。娘ペルセフォネを冥界の王ハデスに奪われ,悲嘆と怒りをもって遠くを見つめる女神デメーテルを表わす。大理石に深く刻まれた目や衣のひだ表現から,像はスコパス派のすぐれた作家の手によったものと推定されている。前 340~330年頃の作 (大英博物館) 。

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