改訂新版 世界大百科事典 「トリプトレモス」の意味・わかりやすい解説
トリプトレモス
Triptolemos
ギリシア神話で,アテナイ近郊のエレウシスの王子。彼の両親のケレオスKeleosとメタネイラMetaneiraは,五穀の女神デメテルが行方不明になった娘のペルセフォネを求めてエレウシスに来たとき,彼女を女神と知らぬまま親切に処遇した。デメテルはこの好意に報い,トリプトレモスに有翼の竜が引く車を与えて,麦の栽培を全世界に広めさせたという。前5~前4世紀のアテナイは,この神話を根拠にして,ギリシアのすべてのポリスから初穂の奉納を受ける資格があると主張した。トリプトレモスの名は〈3度鋤(す)く者〉の意で,古代のギリシア人が年に3度,土地を鋤く習いであったことにちなむと説明されている。
執筆者:水谷 智洋
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報