トリプトレモス(読み)とりぷとれもす(英語表記)Triptolemos

日本大百科全書(ニッポニカ) 「トリプトレモス」の意味・わかりやすい解説

トリプトレモス
とりぷとれもす
Triptolemos

ギリシア神話英雄エレウシスケレオスの子で、母はメタネイラ。デモフォンの兄弟とされているが、その出自には異説が多く、いずれにせよ穀物の女神デメテルから与えられた竜車に乗って世界中に麦の栽培を広めたという。彼が有翼の竜車に乗って空中を走る図は、古くから好んで壺絵(つぼえ)などに描かれていた。またトリプトレモスとは「三度耕した畑」の意味であるが、もともとはエレウシスの古い神格で、彼は父のあとエレウシスの王となってアッティカテスモフォリア祭を創始したという。エレウシスの祭儀の縁起については、デメテルとその娘コレ(ペルセフォネ)に次いで重要な位置にあったと考えられる。

[伊藤照夫]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「トリプトレモス」の意味・わかりやすい解説

トリプトレモス
Triptolemos

ギリシア神話の英雄。エレウシスの王ケレオスと妃メタネイラの子。ペルセフォネをハデスにさらわれたのを怒り,神界を離れたデメーテルがエレウシスに来て,ケレオスの宮廷に滞在した間に,デメーテルの鍾愛を受け,麦の種と空を飛ぶ竜の引く車を与えられて,世界中に農業を広めて回り,またデメーテルとペルセフォネを祀る密儀の執行方法を教えられたという。

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