日本大百科全書(ニッポニカ) 「デンキウナギ」の意味・わかりやすい解説
デンキウナギ
でんきうなぎ
electric knifefish
[学] Electrophorus electricus
硬骨魚綱コイ目デンキウナギ科Electrophoridaeに属する淡水魚。シビレウナギともいう。体は円筒形で鱗(うろこ)はなく背びれもない。臀(しり)びれは尾びれとつながっている。えらの上部から咽頭(いんとう)部に空気呼吸ができる器官があり、胞状のうきぶくろとともに空気呼吸もする。ウナギ型をしているがウナギ目魚類とは類縁関係がなく、南アメリカのコイ目カラシン類に近縁といわれており、1科1属1種である。最大2.9メートルになる。南アメリカのオリノコ川とアマゾン川に分布する。
デンキウナギは、躯幹(くかん)部、尾部の大半を占める長い左右1対の発電器官をもち、それは体の容積の半分以上に及び、中央部の主器官、その下のハンター器官、サックス器官の三つに区分される。発電器官は筋肉組織から分化したといわれているが、20~50個の電柱が重なり合って構成されており、各電柱は1枚の電板を入れてコロイド状物質で満たされた電函(でんかん)が、体軸に沿って多数並んで形成されている。電板は前から後ろへ向かって乳頭層、中間層、絨毛(じゅうもう)層の3層に区分され、後方の絨毛層に電気神経が分布している。発電器官を支配する中枢は延髄にあり、放電の際に電流は神経面から無神経面に向かって流れる。したがってデンキウナギでは電流は尾から頭のほうに流れる。起電力は300~800ボルト(0.5~0.7アンペア)といわれている。電力は大形魚ほど強い。水中に静止するときは発電は不活発だが、動くと毎秒約50の周波数で放電する。放電された魚はけいれんをおこして湾曲し、硬化しひれを広げて動けなくなる。小魚を食う。
[中坊徹次]