改訂新版 世界大百科事典 「発電器官」の意味・わかりやすい解説
発電器官 (はつでんきかん)
electric organ
電気魚と総称される一部の魚類にある器官で,電気器官とも呼ばれる。シビレエイでは体盤の左右に,ガンギエイでは尾部の両側に,デンキナマズでは胴部に,モルミルス(アフリカ産の小型淡水魚)の仲間では尾部の両側にそれぞれ発電器官があるが,デンキウナギは体側に3種類の発電器官を1対ずつ備える。ほとんどの発電器官は体側の横紋筋から分化したもので,多数の電気柱によって構成される。各電気柱は電函(でんかん)が同方向に重なってできている。各電函は薄い板状の筋肉からなり,片面に神経が密に分布する。放電の目的は攻撃,防御,コミュニケーションなど種類によって異なり,起電力もさまざまである。デンキウナギは電気受容器も備えていて,常時10V程度の放電を続けて周囲のようすを探り,小魚を見つけると,瞬間的に主発電器から500V以上の電気を放ってこれを倒して食べる。モルミルスの仲間も発電器官と電気受容器一式を備えていて,1秒間に10~20回,種類によっては300~350回の割合で,数mVの放電を続け,周囲の障害物を感知したり,仲間とのコミュニケーションに利用したりしている。
執筆者:岩井 保
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報