トゥカノ(英語表記)Tucano

改訂新版 世界大百科事典 「トゥカノ」の意味・わかりやすい解説

トゥカノ
Tucano

広義の言語グループとしてのトゥカノは,南アメリカのコロンビア領に位置する北西アマゾンの森林地帯に居住する人々を指す。東トゥカノと西トゥカノに分けられ,前者はデサナ,トゥカノ,ピラ・タプヤ,ワナノ,カラパナ,トゥユカ,ミリティ・タプヤ,ユリティ・タプヤ,クベオ,バラサナの諸族から成り,後者はカケタ川流域からペルー領アマゾンに分布する諸族から成る。民族学的に知られているのは東トゥカノの諸族で,西トゥカノについては詳しいことはわかっていない。北西アマゾンにはトゥカノ系のほかに,アラワク系,カリブ系の諸族も入りまじっている。コロンビア領の東トゥカノに限った資料によると,その人口は5000~6000である。東トゥカノの諸族は,細部を別にすれば,基本的に共通した文化を有している。生業の基本は焼畑による農耕で,主作物の有毒マニオクは,根をすりおろし,毒抜きの処理をしたデンプンカサベ(カリブ語に由来)という大きなせんべい状のパンを焼く。狩猟漁労も重要であるが,部族によって異なり,たとえばデサナは前者に重点をおくが,ピラ・タプヤは後者に比重をかけている。一つの部族はいくつかの父系クランによって構成され,クラン外婚規定(氏族)がある。父系で結ばれたリネージ成員と婚入した女子により構成される共住集団はマロカという大家屋にいっしょに住み,生産,消費活動を共にする。マロカの成員は長老男子により統轄されるが,それ以上のレベルの政治統合はみられない。祖先崇拝儀礼が顕著で,これには創世神話,男子成人式,樹皮布製仮面の踊りが複合している。男女の二項対立と互酬を基礎にした世界観があるが,儀礼的幻覚体験(数種類の幻覚を誘発する植物成分を使用する)とも関連して,その象徴的世界は複雑多様になっている。
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出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

世界大百科事典(旧版)内のトゥカノの言及

【アメリカ・インディアン】より

…主作物はマニオクであるが,そのほかにトウモロコシ,サツマイモ,ラッカセイ,トウガラシ,マメなども作る。おもな語族は,アラワク,カリブ,トゥカノ,パノ,トゥピ・グアラニー,ジェ,そのほか系統の不明な言語も少なくない。16世紀のころ,アマゾン川本流の中流部には,オマグア族その他トゥピ・グアラニー語の諸族が,大きな集落を構えていたが,ポルトガル人やスペイン人の進出がさかんになるにつれて急激な人口減少が生じた。…

※「トゥカノ」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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