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トランス脂肪酸 とらんすしぼうさん

知恵蔵の解説

トランス脂肪酸

油脂に含まれる栄養素の一つ。天然に食品中に含まれているものと、油脂を加工・精製する工程でできるものがある。
天然のものは、牛肉や羊肉、牛乳や乳製品のなかに微量のトランス脂肪酸が含まれる。液体の油脂から半固体、固形の油脂を作り出す工程(硬化処理)や油脂中の不純物を除去する工程でトランス脂肪酸が生成されるので、マーガリン、ファットスプレッド、ショートニングや、それを原材料に使ったパン、ケーキ、ドーナツなど洋菓子、揚げ物などにもトランス脂肪酸が含まれる。
国際機関が生活習慣病予防のために開催した専門家の会合「食事、栄養及び慢性疾患予防に関するWHO/FAO合同専門家会合」では、トランス脂肪酸の摂取量を総エネルギー摂取量の1%未満とするよう勧告している。日本人の場合、1人1日当たり2グラム未満が目標量とされるが、農林水産省が2008年に実施した調査結果では、日本人が1人1日当たり食べているトランス脂肪酸の平均的な量は、0.92~0.96グラムと推定されている。ただし、日本人でも食事から取る脂質の量が多い場合には、トランス脂肪酸を取る量も多くなることが報告されている。
トランス脂肪酸は、取りすぎた場合、血液中のLDLコレステロール(いわゆる悪玉コレステロール)が増えて、HDLコレステロール(いわゆる善玉コレステロール)が減ることが報告されている。日常的にトランス脂肪酸を多く取りすぎている場合、少ない場合と比較して狭心症や心筋梗塞(こうそく)などの冠動脈性心疾患(CHD)のリスクを高めることが示唆されている。
健康増進法に基づき表示の基準が定められている飽和脂肪酸やコレステロールと異なり、トランス脂肪酸については表示する際のルールが存在していなかった。そのため、消費者庁は2011年2月21日、トランス脂肪酸の情報開示に関する指針を公表した。指針では、食品事業者に対してトランス脂肪酸に関する情報開示を行う際の考え方を明らかにし、「販売に供する食品の容器包装、ホームページや広告による情報開示を期待」するとしている。
トランス脂肪酸の含有量を表示する場合、名称は「トランス脂肪酸」とし、他の栄養成分と同様に表示することとしている。単位は100グラムもしくは100ミリリットル、または1食分、1包装その他1単位当たりの含有量を一定の値により記載し、単位はグラム(g)で表記する。
一方、食品100グラム当たりのトランス脂肪酸の含有量が0.3グラム未満の場合は「含まない(「無」「ゼロ」「ノン」「フリー」その他これに類する表示)」と表示しても差し支えないとしている。

(星野美穂  フリーライター / 2011年)

出典 (株)朝日新聞出版発行「知恵蔵」知恵蔵について 情報

朝日新聞掲載「キーワード」の解説

トランス脂肪酸

食品に含まれる油成分の一種。菓子などに使われるショートニングやマーガリンをつくるときに、植物油に水素を加えて固形化する過程などで生成される。悪玉コレステロールを増加させ、動脈硬化心臓病のリスクを高めるとの研究機関などの報告がある。

(2010-12-26 朝日新聞 朝刊 1総合)

出典 朝日新聞掲載「キーワード」朝日新聞掲載「キーワード」について 情報

デジタル大辞泉の解説

トランス‐しぼうさん〔‐シバウサン〕【トランス脂肪酸】

食用油を高熱で処理する、また水素を加えて固まりやすくする時に生じる不飽和脂肪酸。マーガリン、ショートニングなどの加工油に多く含まれる。自然には牛などの肉・脂肪に少量含まれる。過度の摂取は健康に有害とされ、規制する国もある。トランス型不飽和脂肪酸。TFA(trans fatty acid)。→不飽和結合

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

トランス脂肪酸
とらんすしぼうさん
trans fatty acid

不飽和脂肪酸のうち、水素が炭素の二重結合を挟んでそれぞれ反対側につく、トランス型の構造をもつもの。自然界に存在する不飽和脂肪酸の二重結合のほとんどは水素が同じ側につくシス型であるが、部分水素添加油脂(マーガリン、ショートニングなど)や、ウシなどの反芻(はんすう)動物の体脂肪と乳脂肪にはトランス型の二重結合をもつトランス脂肪酸が存在する。このうち摂取量の多い部分水素添加油脂中のトランス脂肪酸が、健康への影響を問題視されている。これは工業型トランス脂肪酸ともよばれ、エライジン酸が主成分の一つである(反芻動物油脂ではバクセン酸が主成分)。摂取量に応じていわゆる悪玉コレステロールであるLDLコレステロールの値を上昇させるだけでなく、善玉コレステロールのHDLコレステロール値を低下させ、飽和脂肪酸よりも強い心血管疾患の危険因子である。このため、アメリカ、カナダなどでは一定量以上のトランス脂肪酸を含む食品に対し、「1サービング(1食分)当り0.2~0.5グラム」等の含量表示の義務化が、デンマーク、スイスなどでは含量規制(100グラム当り2グラム以上のトランス脂肪酸を含む油脂の使用禁止)が行われている。世界各国での規制の動きもあり、2005年ごろから食品中のトランス脂肪酸含量は低減化されているが、摂取量低減策としては含量規制がより効果的である。世界保健機関(WHO)と国連食糧農業機関(FAO)の指針である、1日当りエネルギー摂取量の1%以下が世界的にトランス脂肪酸の摂取目安とされている。日本人のトランス脂肪酸摂取量は、内閣府の食品安全委員会の報告では1日当り摂取エネルギーの0.3%程度で、平均的には問題とならないが、脂質摂取量の個人差は著しく、とくに青年層で注意が必要である。5年ごとに厚生労働省が改定を行っている「日本人の食事摂取基準」の2010年版では、できるだけ少なく、と述べるに止まっているが、食品安全委員会で健康への影響を取りまとめており、消費者庁は2010年に情報開示に関する指針(案)を提示している。表示方法は、100グラムもしくは100ミリリットル、または1食分、1包装その他1単位当りのトランス脂肪酸の含有量をグラムで表示する(ただし0.3グラム未満はゼログラムと表示できる)ものである。[菅野道廣]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

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