エライジン酸(読み)えらいじんさん(その他表記)elaidic acid

日本大百科全書(ニッポニカ) 「エライジン酸」の意味・わかりやすい解説

エライジン酸
えらいじんさん
elaidic acid

鎖式不飽和カルボン酸の一つ。オレイン酸幾何異性体トランス-9-オクタデセン酸構造をもつ()。

 オレイン酸を少量のセレンとともに150~200℃に加熱すると、二重結合の異性化がおこりエライジン酸を生成する(エライジン化)。

 エタノールエチルアルコール)からの再結晶により白色ろう状の結晶が得られる。水には溶けないが、エタノール、エーテルなどに溶ける。ヨウ化水素と赤リンで還元するとステアリン酸になる。エライジン酸のグリセリドをエライジンとよぶ。代表的なトランス脂肪酸であり、多量に摂取すると悪玉LDLコレステロールを増加させ心臓疾患のリスクを高めるといわれ、2000年代になって食品のトランス脂肪酸含有量の表示を義務づけたり、使用を制限するなどの規制をする国が増えている。日本ではトランス脂肪酸の平均摂取量はWHO勧告の上限値(全摂取カロリーの1.0%未満)より低く、現在は規制の対象となっていない。

[廣田 穰]



エライジン酸(データノート)
えらいじんさんでーたのーと

エライジン酸

 分子式 C18H34O2
 分子量 282.5
 融点  44.5℃
 沸点  234℃/15mmHg
 比重  0.8701

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改訂新版 世界大百科事典 「エライジン酸」の意味・わかりやすい解説

エライジン酸 (エライジンさん)
elidic acid

化学式CH3(CH27CH=CH(CH27COOH。トランス-9-オクタデセン酸の慣用名。不飽和脂肪酸の一つ。天然油脂中に大量に存在するオレイン酸(シス型)の異性体で,それ自身は天然には存在しない。水素添加によってステアリン酸になる。融点44.5℃,沸点234℃(15mmHg)の白色固体。オレイン酸を亜硝酸またはセレンを用いて異性化させると得られる。亜硝酸などは触媒として作用するが,セレンの場合0.003~0.1%の量で,150~220℃でエライジン化する。
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化学辞典 第2版 「エライジン酸」の解説

エライジン酸
エライジンサン
elaidic acid

(E)-9-octadecenoic acid.C18H34O2(282).CH3(CH2)7CH=CH(CH2)7COOH(トランス形).オレイン酸の幾何異性体で,オレイン酸に常温で亜硝酸ガスを通じると生成される.無色の小葉片状晶.融点51 ℃,沸点288 ℃(13.3 kPa),234 ℃(2.0 kPa).0.851.1.4308.[CAS 112-79-8]

出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報

栄養・生化学辞典 「エライジン酸」の解説

エライジン酸

 C18H34O2(mw282.47).脂肪酸の一つ.trans-9-オクタデセン酸.CH3(CH2)7CH=CH(CH2)7COOH

出典 朝倉書店栄養・生化学辞典について 情報

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「エライジン酸」の意味・わかりやすい解説

エライジン酸
エライジンさん
elaidic acid

炭素原子数 18で,二重結合1個をもつ脂肪酸。その化学式は C17H33COOH である。オレイン酸 (シス形) の幾何異性体でトランス形の構造をもつ。白色鱗片状晶。融点 44~45℃。

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