日本大百科全書(ニッポニカ) 「エライジン酸」の意味・わかりやすい解説
エライジン酸
えらいじんさん
elaidic acid
鎖式不飽和カルボン酸の一つ。オレイン酸の幾何異性体でトランス-9-オクタデセン酸の構造をもつ( )。
オレイン酸を少量のセレンとともに150~200℃に加熱すると、二重結合の異性化がおこりエライジン酸を生成する(エライジン化)。
エタノール(エチルアルコール)からの再結晶により白色ろう状の結晶が得られる。水には溶けないが、エタノール、エーテルなどに溶ける。ヨウ化水素と赤リンで還元するとステアリン酸になる。エライジン酸のグリセリドをエライジンとよぶ。代表的なトランス脂肪酸であり、多量に摂取すると悪玉のLDLコレステロールを増加させ心臓疾患のリスクを高めるといわれ、2000年代になって食品のトランス脂肪酸含有量の表示を義務づけたり、使用を制限するなどの規制をする国が増えている。日本ではトランス脂肪酸の平均摂取量はWHO勧告の上限値(全摂取カロリーの1.0%未満)より低く、現在は規制の対象となっていない。
[廣田 穰]