ドクサ(その他表記)doxa

デジタル大辞泉 「ドクサ」の意味・読み・例文・類語

ドクサ(〈ギリシャ〉doxa)

プラトンが、イデアによる知識であるエピステーメーに対し、一段下の感覚による知識(根拠のない主観的信念)をさして呼んだ語。臆見おっけん。思いし。

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精選版 日本国語大辞典 「ドクサ」の意味・読み・例文・類語

ドクサ

  1. 〘 名詞 〙 ( [ギリシア語] doxa ) 哲学で、真の知識(エピステーメー)に対し、当人にそう思われているにすぎないこと。臆見。思いなし。

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ドクサ」の意味・わかりやすい解説

ドクサ
doxa

「臆見」を意味するギリシア語。エピステメの対立概念。低次の認識を意味する語としてドクサを初めて使ったのはクセノファネスであるが,永遠不変の存在についての真なる確証に対して,感覚に基づくドクサを立てたのはパルメニデスである。プラトンは後者思想をうけて,真実在についての知識 (エピステメ) と感覚的事象を対象とするドクサを認識論的存在論的に峻別,さらにドクサを感覚的個物に対する確証と感覚的個物の似像に対するエイカシア区別した。アリストテレスはこれに対して存在論的区別を退け,エピステメを一般者ないし必然的なものについての判断とし,ドクサを感覚的個物にかかわるものとしている。エピクロス派では感覚そのものは真と認めるが,感覚に近い自発的な精神作用であるドクサには感覚の明証性の限界を踏越えて誤謬の可能性があるとしている。

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世界大百科事典(旧版)内のドクサの言及

【エピステーメー】より

…ラテン語のスキエンティアscientia(英語のscienceの語源)にあたるギリシア語。もともとは〈ドクサdoxa〉つまり蓋然的な見解と対立し,とくにプラトンにおいて真実在に対する学問的で厳密な知を意味した。現代哲学においては,フランス構造主義とりわけM.フーコーによって新しい意味を与えられた。…

【知識】より

…知識とは,したがって,より正確には,ものごとを〈見分け〉〈わきまえ〉(わき=分き)て〈しる〉こと,またとりわけ,そのようにして知られ,ないしは領られた内容を意味するということができよう。
[知識の確実性,科学的知識]
 知識は,以上のことからして,当然,個人的な思いなしあるいは臆見(ドクサdoxa)とは区別される。思いなしあるいは臆見は,ものごとのありようを正確に見分け,識別して,領り,支配する域には達していないと考えられるからである。…

※「ドクサ」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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