ドロバチ (泥蜂)
mud dauber
膜翅目ドロバチ科Eumenidaeのうちトックリバチ類を除く昆虫の総称。腹部第2節が細くなっているトックリバチ類と異なり幅が広い。多くのものは黒色で,黄色や橙褐色の斑紋や帯紋がある。中空の植物の枯れた茎や枝,竹筒,木材の穴,岩石のくぼみや割れ目,人家の軒下などに泥で巣をつくり幼虫のために獲物を蓄える。多くのものはメイガ科,ハマキガ科,ヤガ科などの鱗翅目の幼虫を狩る。日本には十数種分布する。いずれも体長10~20mm内外。オオカバフドロバチOrancistrocerus drewseniは岩や軒下など雨のかからない隅に練り土でひさご型の巣をつくる。その内部に2~3の独房をつくり入口に泥で換気孔をつける。ミカドドロバチEuodynerus notatus nipanicusは竹筒などに巣をつくる。オオフタオビドロバチAnterhynchium flavomarginatum micadoは孔筒中やクマバチなどの旧坑道内に巣をつくり,入口に灰,砂粒,紙片などに唾液をまぜたものを塗り耐水性にする。ヤマトハムシドロバチSymmorphus decensは幼虫の餌としてフジハムシの幼虫を狩る。
執筆者:勝屋 志朗
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ドロバチ
どろばち / 泥蜂
昆虫綱膜翅(まくし)目ドロバチ科のオディネルス属Odynerusやリンキウム属Rhynchiumその他数属のカリバチの総称。巣をつくるのに多かれ少なかれ泥の練り土を用いるのでドロバチの名がある。スズバチやトックリバチも広義のドロバチである。多くの種類が竹筒を泥で仕切り、幼虫室(独房)を直列させる。ハムシドロバチ属Symmorphusはハムシやゾウムシの幼虫を狩るが、ほかはすべてアオムシを狩る。オオフタオビドロバチAnterhynchium flavomarginatum micadoや小さなチビドロバチStenodynerus frauenfeldiは日本にもっとも普通にみられる。
[平嶋義宏]
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ドロバチ
mason wasp
膜翅目ドロバチ科の昆虫のうち,土で壺形の巣をつくるトックリバチ類以外の種をいう。ドロバチ科 Eumenidaeはスズメバチ科 Vespidaeの亜科として扱われることもあるが,すべて孤独性の狩人蜂で,雌は鱗翅類の幼虫を捕えて育房にたくわえ,幼虫の餌とする。巣は既存の孔を利用するものが多いが,外国には地中に坑道を掘るものもある。日本に産するものは竹筒を利用するものが多く,唾液で土を溶かしてその泥で壁をつくって仕切り,幼虫の育房にする。小型種には草屋根のわら筒や材中に穿孔された甲虫孔を利用するものが多い。トックリバチ類と同様に卵は細い糸で育房の天井からつるす。日本に 15種ほどが知られている。
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ドロバチ
膜翅(まくし)目ドロバチ科の中の1群の総称。カリウドバチの1種でトックリバチ類に近似するが腹部第2節の幅が広い。植物の枯れた茎,枯竹,木材の穴などに泥をつめて巣を作り,チョウ,ガの幼虫を狩ってたくわえ幼虫の餌とする。ハバチ類や甲虫類の幼虫を狩る種類もある。日本に40余種,オオフタオビドロバチ(体長16mm),ミカドドロバチ(体長7〜14mm)など。
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世界大百科事典(旧版)内のドロバチの言及
【カリウドバチ(狩人蜂)】より
…自分より小さい昆虫も狩りの対象になって,利用可能な獲物の種類が著しく増えた(巣→狩り→卵)。ドロバチ科(スズメバチ上科)のハチは巣をつくるとすぐに産卵する。このとき卵を育房の天井から細糸でつり下げ,その後貯食して育房を閉じる。…
※「ドロバチ」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
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