ド・ブロイ波(読み)ドブロイハ

化学辞典 第2版の解説

ド・ブロイ波
ドブロイハ
de Broglie wave

L.V. de Broglie(1924年)は,粒子の運動にも波動性が伴うのではないかと考え,その波長は粒子の運動量pプランク定数hによって,

であるとした.これをド・ブロイ波,λをド・ブロイ波長という.ド・ブロイ波を物質波ということもある.コンプトン効果(1923年)は,波動と考えられるX線が運動量をもち,粒子性を伴っていることを示したが,de Broglieの考えはこの逆に相当する.かれはこれを電子の場合に適用し,原子のなかで定常状態にある電子の円運動の円周は,このド・ブロイ波の波長の整数倍で,

anλ

であるとすると,

となり,ボーアの角運動量条件が得られ,水素などの原子スペクトルが理解されることを示した.これはのちに,E. Schrödinger(1926年)により量子力学に発展させられた.また,その直後,1927年には,電子線が結晶により回折されてド・ブロイ波の概念が成立することが示された.現在では,電子に限らずいかなる粒子の運動に対してもド・ブロイ波動が伴うと考えられている.

出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典の解説

ド・ブロイ波
ド・ブロイは
de Broglie wave

粒子の波動性を強調するときの用語物質波ともいう。光については,干渉や回折現象がみられることから波であると固く信じられてきたが,光電効果コンプトン効果などでは,光は粒子としてふるまうことが明らかになった。フランスの物理学者 L.V.ド・ブロイは,類推によって粒子と考えられていた電子も,光のように波の性質をもつという考えを 1924年に提唱した。この考えは,27年から 28年にかけて,C.デービソン,L.ジャーマー,G.トムソン菊池正士らによって,電子線について実験的に確認された。電子だけでなく陽子などについても波の性質が認められるため,一般に粒子の波動性を強調するときにド・ブロイ波という用語を用いる。運動量 p の粒子のド・ブロイ波では,波長が h/p ( hプランク定数 ) で与えられる。この波長のことをド・ブロイ波長という。

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世界大百科事典内のド・ブロイ波の言及

【ド・ブロイ】より

…22年のA.H.コンプトンのX線散乱の実験結果などから光の粒子性が明確になると,光や電子における粒子性と波動性の対応関係の確立を目ざし,その結果,アインシュタインの光量子説の基礎にある式Ehν,ph/λが,任意の物質粒子や光に適用できる一般式であることを明らかにした(Eはエネルギー,hはプランク定数,νは光の振動数,λは波長,pは運動量)。この物質波(ド・ブロイ波)の理論は,24年に《量子論の研究》と題する学位論文にまとめられ,パリ大学理学部に提出された。アインシュタインは,P.ランジュバンを通じて送られてきたこの論文の草稿を見て,いちはやく新理論の価値を認め,ゲッティンゲンのM.ボルンやチューリヒのE.シュレーディンガーに伝えた。…

【物質波】より

…同様に陽子,中性子なども質点ではなく,波である。このような電子の波,広い意味では陽子などの粒子の波のことを物質波またはド・ブロイ波de Broglie waveという。 1924年ド・ブロイは物質波の説を唱え,粒子としての電子の運動量をpとするとき,その波動の波長λはλ=h/pで与えられることを示した(これをド・ブロイの関係ということがある)。…

【量子力学】より


[物質波]
 1924年,ド・ブロイは光における波動と粒子の二重性を電子にまで及ぼすことを考え,電子は体内振動をもつ粒子だとしてボーアの量子条件に解釈をあたえた。この考えは,結局,エネルギーEと運動量pをもつ電子に振動数ν=E/hと波長λ=h/pの波動を付随させることに落ちつき,この波動は物質波ないしド・ブロイ波とよばれることになった。
[波動力学]
 ド・ブロイは物質波の位相しか問題にしなかった。…

※「ド・ブロイ波」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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