ニュルンベルク諸原則(読み)にゅるんべるくしょげんそく(その他表記)Nürnberg Principles

日本大百科全書(ニッポニカ) 「ニュルンベルク諸原則」の意味・わかりやすい解説

ニュルンベルク諸原則
にゅるんべるくしょげんそく
Nürnberg Principles

第二次世界大戦後、ドイツのニュルンベルクで行われた国際軍事裁判で、裁判所条例および判決によって認められた国際法の諸原則。1946年12月11日、国連総会はこれらの諸原則を定式化するよう、総会の補助機関たる国際法委員会に指示した。これに応じて委員会は51年に「人類の平和と安全に対する罪についての法典草案」を作成し、各国の反応をみたうえで、54年にその改定案を総会に提出した。この案では、侵略戦争や直接間接に侵略に関連する行為集団殺害、一般人民に対する非人道的行為および戦争法規の違反を国際犯罪とし、責任ある個人は処罰されるべきことを定めている。その後、総会の審議は、そのものとしてははかどっていないが、人道に対する罪に関連しては1948年12月にジェノサイド条約が総会で採択され、侵略戦争が国際の平和に対する罪を構成することについては、国連総会が採択した70年の友好関係宣言、74年の侵略の定義にも明記されている。また92年からは法典案とは別に国際刑事裁判所規程草案が作成され、それに基づき98年ローマで開催された政府間外交会議で、国際刑事裁判所設立条約および裁判所規程が採択された。

[石本泰雄]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ニュルンベルク諸原則」の意味・わかりやすい解説

ニュルンベルク諸原則
ニュルンベルクしょげんそく
Nürnberg principles

ニュルンベルク裁判所条例およびこの裁判所の判決によって承認された国際法の諸原則をいう。この国際軍事裁判対象となった国際犯罪は,「平和に対する罪」「戦争犯罪」「人道に対する罪」であり,これらの犯罪を構成する行為を行なった個人の責任が追及された。 1954年,国連国際法委員会が採択した「人類の平和と安全に対する犯罪についての法典草案」は,このニュルンベルク諸原則を法式化しようとしたものであるが,ジェノサイド条約と異なり,実定法化されていない。

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世界大百科事典(旧版)内のニュルンベルク諸原則の言及

【戦争犯罪】より

… この新しい戦争犯罪の概念は,戦後の国連を中心とする国際法の展開の中で,単に戦勝国のつくりあげたものというより普遍妥当的な概念として,より明確になりいっそう定着するようになった。第1回国連総会は〈ニュルンベルク裁判所条例によって認められた国際法の諸原則〉を確認する決議を全会一致で採択し,1950年国連国際法委員会の作成したいわゆるニュルンベルク諸原則は,(1)平和に対する罪,(2)戦争犯罪,(3)人道に対する罪(条例中にあった〈戦前または戦争中に〉の表現は削除された)を国際法上の犯罪として処罰されるものとした(第6原則)。さらに,1954年国際法委員会の採択した〈人類の平和と安全に対する犯罪の法典案〉は,責任を有する個人が処罰されるべき国際法上の犯罪とみなされる〈人類の平和と安全に対する罪〉の中に,平和に対する罪に該当する侵略行為やその威嚇,人道に対する罪に該当する行為,戦争の法規および慣例に違反する行為をも列挙した。…

【ニュルンベルク裁判】より

…それにより被告たちにも弁明の機会を与え,法廷に提出された種々の主張や証拠類を客観的に分析する可能性を後世に残したからである。 裁判所条例に従って判決が認定した犯罪類型は,1946年の国際連合総会決議により〈ニュルンベルク諸原則〉の名のもとに確認され,この諸原則の定式化を委託された国連の国際法委員会は54年に〈人類の平和と安全に対する罪の法典案〉を作成した。このうち〈戦争犯罪〉は国際法上伝統的に認められてきたもので問題はないが,〈共同謀議〉はロンドン会議のアメリカ代表の要請により裁判所条例に取り入れられた英米法固有の概念であり,濫用される危険性が大きい。…

※「ニュルンベルク諸原則」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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