ジェノサイド条約(読み)ジェノサイドジョウヤク(英語表記)Genocide Convention

デジタル大辞泉 「ジェノサイド条約」の意味・読み・例文・類語

ジェノサイド‐じょうやく〔‐デウヤク〕【ジェノサイド条約】

1948年12月の国連総会で採択された、集団殺害罪の防止および処罰に関する条約。国民・人種・民族・宗教上の集団を殺害し迫害する行為を防止し、国際法上の犯罪として処罰しようとするもの。

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

共同通信ニュース用語解説 「ジェノサイド条約」の解説

ジェノサイド条約

ナチスによるユダヤ人大量虐殺(ホロコースト)を教訓に1948年の国連総会で採択。人種、民族、宗教などが異なる集団を破壊する目的で行われる殺害や迫害をジェノサイドと定義、国際法上の犯罪であるとして、防止と処罰を各国に求めた。処罰対象は実行行為者のほか共同謀議教唆に関与した者も含む。ほとんどの先進国、主要国を含む約150カ国が締結しているが、日本は一部の処罰対象が国内法と整合しないとの理由で未締結。(ハーグ共同)

更新日:

出典 共同通信社 共同通信ニュース用語解説共同通信ニュース用語解説について 情報

精選版 日本国語大辞典 「ジェノサイド条約」の意味・読み・例文・類語

ジェノサイド‐じょうやく‥デウヤク【ジェノサイド条約】

  1. 一九四八年一二月、第三回国連総会で採択されたジェノサイドの防止および処罰に関する条約。五一年一月発効。

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報 | 凡例

日本大百科全書(ニッポニカ) 「ジェノサイド条約」の意味・わかりやすい解説

ジェノサイド条約
じぇのさいどじょうやく
Genocide Convention

「集団殺害罪の防止および処罰に関する条約」の略称。ジェノサイドはギリシア語と英語の合成語で、集団殺害を意味する。第二次世界大戦中、ナチス・ドイツによってユダヤ人の大量虐殺が行われ、戦後に国際軍事裁判所による「人道に対する罪」を犯した犯罪人の処罰をもたらしたが、この条約は、このような非人道的行為の防止と処罰を一般的に制度化しようとするものである。1948年12月、国連総会で全会一致によって採択され、51年1月に発効した。1998年現在、アメリカ、ロシア、イギリス、中国、フランスを含む129か国が当事国になっているが、わが国はこれに加入していない。

 この条約は集団殺害を国際法上の犯罪とする。条約によれば、「国民的、民族的、人種的または宗教的集団の全部または一部を破壊する意図」をもって行う集団構成員の殺害、肉体的または精神的な重大な加害、肉体的破滅をもたらす意図による生活条件の強制、出生防止措置、児童の強制移住はすべて集団殺害とされ(第2条)、このような行為、その共同謀議、教唆、未遂、および共犯は、平時たると戦時たるとを問わず、処罰されるべきものとされている(第1条、第3条)。そのために当事国は国内立法を行う義務を負う。行為地の国内裁判所のほかに、条約は国際刑事裁判所による国際的手続での処罰をも構想しているが、実際にこの裁判所の設立は容易ではなかった。しかし、1994年に国連国際法委員会の作成した国際刑事裁判所規程草案に基づき、98年ローマで開かれた政府間外交会議で、同裁判所の設立条約および裁判所規程が採択された。この規程で「集団殺害罪」は、裁判の対象犯罪の第一にあげられている。

[石本泰雄]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

百科事典マイペディア 「ジェノサイド条約」の意味・わかりやすい解説

ジェノサイド条約【ジェノサイドじょうやく】

正称は〈集団殺害罪の防止および処罰に関する条約〉。ジェノサイドgenocideは集団殺害の意。1948年第3回国連総会で採択。第2次大戦中にユダヤ人など特定の宗教・政治的信条を奉じる,あるいは特定の国家・民族に属する人びとに対して,集団殺害その他非人道的な迫害行為がなされたが,この条約は戦時・平時を問わずこのような行為を国際犯罪と断定し,今後再び同じ惨禍が繰り返されることのないよう適当な措置をとることを定めている。また1998年採択の〈ローマ規程〉にもとづき,2003年3月ハーグに常設の国際刑事裁判所が設置された。ただし,日本はいずれにも未加入。→人道に対する罪
→関連項目国際軍事裁判戦争法規

出典 株式会社平凡社百科事典マイペディアについて 情報

知恵蔵 「ジェノサイド条約」の解説

ジェノサイド条約

第3回国連総会が1948年12月9日、集団殺害を国際法上の犯罪とし、防止と処罰を定めるため採択した条約。正しくは集団殺害罪の防止及び処罰に関する条約。51年1月12日に発効したが、日本は加入していない。ジェノサイドというのは、「種族」(genos)と「殺害」(cide)の合成語であり、国民的、人種的、民族的、宗教的集団を破壊する意図で、集団構成員を殺害し、肉体的・精神的危害を加え、肉体的破滅をもたらす生活条件下に置き、出生防止措置を科すような行為、を総称する。第2次大戦中にナチスが行ったユダヤ人の大量虐殺は、典型的なジェノサイドであり、戦後のニュルンベルク裁判で「人道に対する罪」として処罰された。この条約はそれを一般化したもので、行為者は国家統治者、公務員、私人を問わず、また共同謀議、教唆、未遂、共犯も処罰することにしている。行為地の国内裁判所だけでなく、旧ユーゴスラビアやルワンダ等の国際刑事裁判所(戦犯法廷)もその処罰を定めている。

(宮崎繁樹 明治大学名誉教授 / 2008年)

出典 (株)朝日新聞出版発行「知恵蔵」知恵蔵について 情報

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ジェノサイド条約」の意味・わかりやすい解説

ジェノサイド条約
ジェノサイドじょうやく
Convention on the Prevention and Punishment of the Crime of Genocide

正式には「集団殺害罪の防止及び処罰に関する条約」。 1948年 12月9日に第3回国連総会で全会一致をもって採択され,51年1月 12日に発効した。 genocideは種族殺害を意味する合成語で,この条約は第2次世界大戦中のナチスによるユダヤ人集団殺害などの非人道的行為に対する批判として生れた。その第1条で「集団殺害が平時に行われるか戦時に行われるかを問わず,国際法上の犯罪であることを確認し,これを防止し処罰する」ことを約束している。また第2条で「国民的,人種的,民族的又は宗教的集団を全部又は一部破壊する意図をもって行われた」殺人,加害などを集団殺害と規定している。なお第6条において,行為地の国内裁判所のほか,国際刑事裁判所の管轄権も予定されている。当事国は 98年現在,125ヵ国 (日本未加入) 。

出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報

山川 世界史小辞典 改訂新版 「ジェノサイド条約」の解説

ジェノサイド条約(ジェノサイドじょうやく)
Genocide Convention

特定の国民,人種民族,宗教集団の絶滅を目的とするジェノサイド(集団殺害)を禁止した条約。集団殺害の行為者のみならず,共同謀議,教唆,共犯も国内裁判所または国際刑事裁判所で審理,処罰される。第二次世界大戦前から戦中にかけてナチス・ドイツの行ったユダヤ人大量虐殺の反省にもとづく「人道に対する罪」をもとに条約化された。1948年国連総会で採択,51年発効。

出典 山川出版社「山川 世界史小辞典 改訂新版」山川 世界史小辞典 改訂新版について 情報

旺文社世界史事典 三訂版 「ジェノサイド条約」の解説

ジェノサイド条約
ジェノサイドじょうやく
Genocide Convention

1948年12月の第3回国際連合総会において採択された,ジェノサイド(集団殺害)の防止ならびに処罰に関する条約
1946年の国連第1回総会で決議され,第3回総会で世界人権宣言とともに採択され,51年に発効した。

出典 旺文社世界史事典 三訂版旺文社世界史事典 三訂版について 情報

世界大百科事典(旧版)内のジェノサイド条約の言及

【ジェノサイド】より

…決議は,ジェノサイドを国際法上の犯罪と述べるとともに,経済社会理事会に対して条約案起草のための研究を要請した。48年12月に国連総会は,〈集団殺害罪の防止および処罰に関する条約〉(通称,ジェノサイド条約)を採択した(1951年1月発効)。
[ジェノサイド条約]
 ジェノサイド条約では,ジェノサイド(集団殺害)を,特定の国民的,人種的,民族的,宗教的集団を全部または一部破壊する意図をもって,(1)集団構成員を殺し,(2)重大な危害を加え,(3)肉体的破壊をもたらす生活条件を故意に課し,(4)集団内の出生防止措置を課し,(5)集団の児童を他の集団に強制的に移すこと,と規定している(2条)。…

【ニュルンベルク裁判】より

… 他方,〈人道に対する罪〉は伝統的な〈戦争犯罪〉と重複する点が多く,国際連合総会もニュルンベルク諸原則の確認と同時に,集団殺害(ジェノサイド)が文明世界の非難する国際法上の犯罪である旨の決議を採択した。さらに総会は1948年に〈集団殺害の防止と処罰に関する条約(ジェノサイド条約)〉を採択し,国民的,人種的,民族的または宗教的集団を破壊する目的で構成員を殺害したり,彼らに重大な肉体的・精神的苦痛を加えるなどの行為の実行者,未遂者,教唆者等の処罰を規定した。また総会は68年に〈戦争犯罪及び人道に対する罪に対する時効不適用に関する条約〉を採択したが,西ドイツもまた79年には謀殺罪の公訴時効廃止に踏み切り,それ以前から国内法で追及してきたユダヤ人虐殺の荷担者たちを永久に訴追しうる道を開いた。…

※「ジェノサイド条約」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

今日のキーワード

世界の電気自動車市場

米テスラと低価格EVでシェアを広げる中国大手、比亜迪(BYD)が激しいトップ争いを繰り広げている。英調査会社グローバルデータによると、2023年の世界販売台数は約978万7千台。ガソリン車などを含む...

世界の電気自動車市場の用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android