ジェノサイド条約(読み)じぇのさいどじょうやく(英語表記)Genocide Convention

日本大百科全書(ニッポニカ) 「ジェノサイド条約」の意味・わかりやすい解説

ジェノサイド条約
じぇのさいどじょうやく
Genocide Convention

集団殺害罪の防止および処罰に関する条約」の略称ジェノサイドはギリシア語と英語の合成語で、集団殺害を意味する。第二次世界大戦中、ナチス・ドイツによってユダヤ人の大量虐殺が行われ、戦後に国際軍事裁判所による「人道に対する罪」を犯した犯罪人の処罰をもたらしたが、この条約は、このような非人道的行為の防止と処罰を一般的に制度化しようとするものである。1948年12月、国連総会で全会一致によって採択され、51年1月に発効した。1998年現在、アメリカ、ロシア、イギリス、中国、フランスを含む129か国が当事国になっているが、わが国はこれに加入していない。

 この条約は集団殺害を国際法上の犯罪とする。条約によれば、「国民的、民族的、人種的または宗教的集団の全部または一部を破壊する意図」をもって行う集団構成員の殺害、肉体的または精神的な重大な加害、肉体的破滅をもたらす意図による生活条件の強制、出生防止措置、児童の強制移住はすべて集団殺害とされ(第2条)、このような行為、その共同謀議教唆未遂、および共犯は、平時たると戦時たるとを問わず、処罰されるべきものとされている(第1条、第3条)。そのために当事国は国内立法を行う義務を負う。行為地の国内裁判所のほかに、条約は国際刑事裁判所による国際的手続での処罰をも構想しているが、実際にこの裁判所の設立は容易ではなかった。しかし、1994年に国連国際法委員会の作成した国際刑事裁判所規程草案に基づき、98年ローマで開かれた政府間外交会議で、同裁判所の設立条約および裁判所規程が採択された。この規程で「集団殺害罪」は、裁判の対象犯罪の第一にあげられている。

[石本泰雄]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ジェノサイド条約」の意味・わかりやすい解説

ジェノサイド条約
ジェノサイドじょうやく
Convention on the Prevention and Punishment of the Crime of Genocide

正式には「集団殺害罪の防止及び処罰に関する条約」。 1948年 12月9日に第3回国連総会で全会一致をもって採択され,51年1月 12日に発効した。 genocideは種族殺害を意味する合成語で,この条約は第2次世界大戦中のナチスによるユダヤ人集団殺害などの非人道的行為に対する批判として生れた。その第1条で「集団殺害が平時に行われるか戦時に行われるかを問わず,国際法上の犯罪であることを確認し,これを防止し処罰する」ことを約束している。また第2条で「国民的,人種的,民族的又は宗教的集団を全部又は一部破壊する意図をもって行われた」殺人,加害などを集団殺害と規定している。なお第6条において,行為地の国内裁判所のほか,国際刑事裁判所の管轄権も予定されている。当事国は 98年現在,125ヵ国 (日本未加入) 。

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