ニュージーランド労働党政権(読み)にゅーじーらんどろうどうとうせいけん

知恵蔵 の解説

ニュージーランド労働党政権

ニュージーランドでは2005年9月に総選挙(一院制、定数121議席)が行われ、労働党は50議席を獲得して第一党の地位を占めた。しかし過半数にはおよばず、政権基盤は弱い。一方、野党国民党は48議席と、与党との差をわずか2議席にまで縮めた。次回の総選挙で政権奪還を目指す。ヘレン・クラーク首相は革新党との連立政権を樹立させることで政権基盤を強化させたが、連立合意までに1カ月もかかった。もともと労働党は中道左派の立場から福祉重視政策を売り物にしてきたが、少数与党の弱点を克服するために右派のニュージーランド・ファースト党、さらには中道の統一未来党にまで政策協力を呼びかける作戦に打って出た。さらに環境派の緑の党や先住民マオリの保護・権利を主張するマオリ党などの少数政党とも、争点ごとの政策合意を取り付けるなど、クラーク政権は薄氷の上での政権運営が求められている。議会外からニュージーランド・ファースト党の「顔」として知られるウィンストン・ピーターズ党首を外相に任命するなど、連立政権の体裁をなんとか保つことができた。政権交代を標榜する国民党は、「小さな政府」を掲げ、減税規制緩和を訴えつつ、先住民マオリへの優遇措置を撤廃すべきであると主張してきた。堅調な経済成長に支えられた労働党は、かろうじて国民党の追撃をかわすことができたが、連立政権の運営は多難である。

(竹田いさみ 獨協大学教授 / 2007年)

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