春の歌、句の中に「うすらひ」が用いられている例は「康資王母集」の「浅緑はるのうすらひとくるより結びかへたる青柳のいと」、俳諧「猿蓑‐四」の「うすらひやわづかに咲(さけ)る芹の花〈其角〉」などかなりあり、現代では「うすらひ・うすごおり」は春の季語とされる。「うすらひ」は「うすらい」と読まれることが多い。
富山県小矢部(おやべ)市石動(いするぎ)の名菓。1752年(宝暦2)、五郎丸屋薄氷本舗5代目の渡辺八左衛門の創作で、厚さ2ミリメートルほどの、色も形も薄氷のような干菓子。前田家から徳川将軍家への献上菓子であった。糯米(もちごめ)粉で薄く大きな生地をつくり、生地の両面に卵と和三盆で製した練り砂糖をはき、生地に少々湿りの入ったころに包丁を入れる。薄氷がぱりんと割れたような不定型に裁ち切り、35℃の熱処理によって半日がかりで干菓子に仕上げる。なお、名古屋市の名舗亀末広(かめすえひろ)では、12月から2月まで、冬の季節菓子として「うすらひ」という生菓子をつくる。菓子の上下に薄氷の風情を表現し、アズキの漉し餡(こしあん)を挟んだ典雅な菓子である。
[沢 史生]
出典 平凡社「普及版 字通」普及版 字通について 情報
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