日本大百科全書(ニッポニカ) 「ハウサ」の意味・わかりやすい解説
ハウサ
はうさ
Hausa
西アフリカのナイジェリア北部からニジェール南部にかけてのサバナ地帯に主として居住するネグロイド系民族。人口約1200万。アフロ・アジア語族チャド語派に属する言語ハウサ語を話す。ギニア・コーン、モロコシなどの雑穀と米を主作物とする農耕民であるが、商業活動も活発に行い、西アフリカの広い地域に進出している。彼らは、13世紀ごろまでに、カノ、カツィナ、ゴビル、ザリアなどハウサの七王国と称される都市国家群を形成し、サハラ交易の重要な中継点となっていた。これらの都市は城壁で囲まれ、周囲の農村を支配する封建領主的な支配層や商人とともに、多数の職人集団を擁し、いろいろな工芸品を産出した。ハウサは、早くからイスラム教に改宗し、イスラムの文物を取り入れてきた。ヨーロッパ人との接触以前に、アフリカ人自身の手によって書かれた唯一の記録とされるハウサの歴史書『カノ年代記』もアラビア語で記されている。ハウサ諸王国の繁栄は長く続いたが、18世紀末に、北西部のソコト地方でイスラム教徒の牧畜農耕民フルベ(フラニ)のジハード(聖戦)がおこり、フラニはまたたくまに、広大な地域を支配する大帝国を築いた。こうしてハウサはフラニ帝国の支配下に置かれ、栄光の歴史を閉じた。
[渡部重行]